研究課題/領域番号 |
23531261
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
小野 昌彦 宮崎大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (40280143)
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キーワード | 不登校 / 教育委員会 / 教師 / 欠席理由 / 行動療法 / アセスメント |
研究概要 |
1.目的:不登校児童生徒に対する市単位の系統的不登校発現予防・減少対策を構築する。2.対象:A市(人口約6万)の全小・中学校(15校)、B市(人口約5万)1中学校、4小学校(平成25年度から全小・中学校協力予定)であった。3.方法(1)A市に対する方法①不登校発現予防対策:a.研修講演の実施:生活指導主任及び主幹教員研修会で研究代表者が不登校認定システム及び「教師のための問題解決10ステップ」の説明を実施した。b.コンサルテーション:研究代表者が統括指導主事に対するコンサルテーションを実施、統括指導主事が年3回、全校15校を巡回した。c.アンケート調査の実施:欠席対応確認の為、全管理職、全教員対象に年2回調査を実施した。d.学力アセスメント:1中学校区でTK式学習進度テストを実施した。歩数測定は、S小学校で予備研究を実施した。②再登校支援:研究代表者が、適応指導教室相談員に随時助言した。(2)B市に対する方法①不登校発現予防対策:a.研修講演の実施:全教職員研修、中学校事例検討会で研究代表者が不登校認定アセスメント及び「教師のための問題解決10ステップ」を説明した。b.学力アセスメント:対象校中学1年生、小学6年生全員にTK式学習進度テストを実施し補習を実施した。②再登校支援:研究代表者が適応指導教室事例を支援した。5.結果 (1)不登校数:平成24年11月時点でA市は不登校68名で昨年度比14名減少した。B市は、不登校数20名で昨年比で微減であった。中学1年生の25%が小学4年生の学力であることが明らかになった。また、2中学校で不登校認定システムの予備研究を実施し、不登校支援ソフトを開発した。6.研究成果と意義:本方法の不登校減少への有効性が示された。また、不登校多発地区の不登校誘発要因として深刻な学力の遅れを明確にしたことは、不登校対策研究上初めてであり意義は大きい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、3年間で市全体で不登校数を80%減少できる不登校発現予防・減少対策の開発である。研究実施1年終了時点では、対策開始前不登校の再登校支援約70%達成の好結果を得ることができた。研究実施2年目の平成24年度は、不登校数前年度比約20%減少であった。これは、校長、教員の不登校認定システムの実施率が向上したことによる。また、A市の大きな課題であるといわれていた低学力に関して、初めて客観的な個人学習進度評価を実施した。このTK式学習進度テスト結果より、登校状態にあっても学年相応の学力を身につけていない為に今後不登校を発現する可能性のある児童生徒が明確となった。従って、この点に関しては、来年度からの補習体制整備等で対応することから、不登校誘発要因が減少することによる不登校未然防止効果が予測される。 また、新たな対象であるB市の支援依頼内容は、平成24年度は1中学校区、平成25年度は全中学校区での不登校減少であった。平成24年度は、主に中学校における「教師のための問題解決10ステップ」活用研修、全中学1年生、小学6年生に対する学力アセスメントを実施した。不登校認定システムは運用されず、学習補充実施、適応指導教室における再登校支援実施のみであった。結果は、中学校の不登校数は微減、小学生不登校は0であった。中学1年生において小学校4年生相当の学力の生徒が25%という実態が明らかになり、平成25年度は、中学校、小学校での学習補習を実施する。また、不登校認定システムは、B市内全小・中学校で実施することを校長会が決定した。校長、教員用の不登校対応参考書、問題未然防止及び不登校支援ソフトが完成し平成25年度から活用が可能となる。 以上、対象市での不登校数減少、教育委員会の協力による平成25年度対策の増加、精選及び教員の児童生徒対応サポートの充実により順調な研究進捗と考える。
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今後の研究の推進方策 |
1.基本的研究推進方策:平成25年度は、A市対象校(中学校5校、小学校10校)、B市対象校(中学校2校、小学校8校)の全対象校に不登校認定システム(小野・大場,2012)を適用して児童生徒の欠席に対して早期に適切なアセスメントに基づく対応を実施する。不登校誘発要因と考えられる低学力対策として、A市の1中学校区、B市1中学校において全中学1年生及び全小学4年生にTK式学習進度テストを実施し、その結果から在籍学年相応の学力を身につけさせる為に個々の児童生徒の学習進度に合わせた補習を実施する。「教師のための問題解決10ステップソフト」、「学校・教師のための不登校支援ツールソフト」を校内事例検討システム、教育支援センター事例検討システムに組み込み、児童生徒に対する支援効果を向上させる。これらの支援のために研究代表者は、学校訪問等によるコンサルテーションを実施する(年6回予定)。 また、校長の参考書として、拙著「校長サポートシリーズ 不登校問題に困った時に開く本)を活用する予定である。さらに、希望校には万歩計を活用した児童生徒の持久力向上による欠席減少対策を提案、支援する。 2.年間計画 2013年4月~5月期:年度対策打ち合わせ、不登校認定システムの校長研修実施、不登校認定システムの開始、「教師のための問題解決10ステップソフト」及び「学校・教師のための不登校支援ツールソフト」の活用法に関する教員研修、事例検討会を実施する。6月~8月期:研究代表者の個別支援、学校コンサルテーションを開始する。TK式学習進度テストの実施、テスト結果に基づいた補習体制を確立する。9月~12月期:実施中の対策の効果をアンケート結果から検討し必要があれば修正する。2014年1月~3月期:調査アンケート及び学校訪問の結果から不登校対策を総括し、次年度の課題と対策を明確化する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.物品費:心理テスト(TK式学習進度テスト・診断料:A市:200名×@0,8千円 160千円、B市:450名×@0,8千円 360千円)合計 520千円 2.旅費:研究打ち合わせ旅費(研究打ち合わせ及びコンサルテーション 宮崎-東京1人×6回×50千円 1泊2日) 300千円、成果発表旅費(日本行動療法学会第39回大会:平成帝京大学、東京、宮崎-東京1人×1回×70千円 2泊3日 70千円、日本特殊教育学会第51回大会:明星大学、東京、宮崎-東京1人×1回×70千円2泊3日 70千円、日本生徒指導学会第14回大会:京都教育大学、京都、宮崎-京都1人×1回×70千円 2泊3日 70千円)210千円 旅費総計 510千円 3.謝金等:研究補助資料整理謝金:2人×60時間×@0.8千円 96千円 4.その他:研究成果投稿費:20千円,学会発表用ポスター印刷代:54千円 合計74千円 5.総合計 1200千円
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