研究課題
幼児教育において必ずしも文字の読み書き習得が求められているものではないが,ひらがな文字を習得する年齢は年々若年化しており,本研究の調査ではひらがな清音について年少児で7.4字,年中児で24.4字,年長児で40.5字と島村・三神(1994)のデータと比較しても書字習得率が年々向上し続けていることが示された。この背景には小学校でのひらがな文字の学習に先行して幼稚園や家庭での教育,さらには学習塾といった外部教育機関などによる介入が考えられるだろう。その一方で,ひらがな書字習得に必要なレディネスが十分に発達していなかったとしても,それを無視して書字学習を強要される可能性も考えられる。この場合に,小学校での学習が開始される以前に,すでに文字学習に対する内発的動機付けが低下し,学習全般にわたって自尊感情の低下を引き起こす可能性がある。上記の問題を改善するために本研究では4年間にわたって幼児期におけるひらがなの読み書き習得の認知的要因に関する調査を続けてきた。平成26年度では,これまでの調査結果の一部を国内の学術雑誌や紀要論文に投稿し,採択に至った。さらに,そこでの問題点を改善した調査結果についても,学術雑誌の投稿に向けて準備を進めており,研究期間終了後も他の研究費を利用して継続して進めていく予定である。さらに,調査結果に基づいて開発されたひらがな書字習得のアセスメントツールにおいては,実際に小学校1年生で書字に困難さがみられる事例に適用し,空間認知や図形記憶には問題はないが,運筆技能に問題があるなどアセスメントとして使えることを実践的に明らかにした。また,書字障害ではないが,いわゆる自己流に書く小学校1年生に対する支援方法として,空間認知を補う色つきマスの使用,運筆技能が未成熟な子どもには始点と終点を意識させながら書字する運筆訓練など,小学校入門期における指導方法の試案を策定した。
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