本年度は、研究II-1、研究II-2、研究III、研究IVについてデータの分析及びまとめを行った。研究II-1では、保護者は、社会参加の現状に関して半数以上は不満を感じていた。中でも介助面の問題や環境面の問題が多く挙げられた。61.6%は「もっと」社会参加をさせたいと望んでいた。研究II-2では、教師は、社会参加の現状については42%が「満足」としている反面、53%は「不充分」との認識であった。経験させたい内容は、保護者同様具体的な活動や場所から、地域での活動など幅広い記述が見られた。 研究IIIは、在学中の社会参加の機会拡大に関わる学校の活動について、全国の肢体不自由特別支援学校を対象として質問紙調査を行った。その結果、118校から回答があり、約半数が全学部を通して「学校での社会参加」に取り組んでいたおり。42.7%がボランティア等外部人材を活用していた。医療的ケアの必要な児童生徒に対して、看護師等の調整により参加を高める工夫がなされていたが、保護者の同伴が条件である学校も多い。活動内容について、小学部では居住地校交流、高等部では施設見学や職場体験等であった。 研究IVでは、重度・重複障害児の保護者に面接調査を行った。その結果、【子どもを通して社会を見る】経験を通して、社会との関わりを考えるが、【人的・物的な環境上の制限】や【重い障害についての捉え】によって外出に対する考えは大きく変動していた。その中で【いい意味での諦め】ができることで、【その子なりの生き方に合わせた社会参加】を考えられるようになっていくという過程が分かった。 以上より重度・重複障害児の社会参加を促すカリキュラム作成においては、運動・動作、認知やコミュニケーション等の発達援助を基盤としながら、小学部段階から学校外のあるいは地域への社会参加を進めることが卒後の社会参加にとっても重要であると考える。
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