研究課題/領域番号 |
23531285
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
川崎 聡大 富山大学, 人間発達科学部, 教授 (00444654)
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研究分担者 |
武居 渡 金沢大学, 学校教育系, 准教授 (70322112)
後藤 多可志 目白大学, 保健医療学部, 講師 (50584231)
若宮 英司 藍野大学, 公私立大学の部局等, 教授 (20426654)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 学習不振 / 学習障害 / 発達性読み書き障害 / 高機能広汎性発達障害 / 認知機能障害 |
研究概要 |
本研究では発達障害児の持つ認知的特徴や学習モダリティーの困難さが学習到達度(学力)に及ぼす影響を明らかにし効率的な学習支援システムの構築を目的としている。今回まず通常小学校3校16学級のうち同意を得た379名を対象として従属変数として学力(NRT),独立変数として非言語性知能(RCPM),「書き」正確性の指標としてSTRAW書字課題,「読み」の流暢性の指標としてひらがな一文字単語速読課題(特異的発達障害診断・治療のための実践ガイドラインより),「聞く」「話す」の背景となる言語性意味理解力の指標として抽象語理解力検査(SCTAW)を設定して因果関係を検討した。本年度の研究成果については以下の点に集約される。(1)学力に影響を及ぼす因子:1年と2~4年に分けて検討した。結果、1年では読みの流暢性(有意味単語連続読み課題)と統語力、意味理解力が国語の学力の独立変数として有効であった(r=.765決定係数.586)。また読み流暢性課題は算数で独立変数として有効であり、読み流暢性が初期学習に密接に寄与することが示された。(2)LDI-Rで検出される「学習障害児」の背景因子の検討:質問紙法と直接検査法の結果を比較した。結果、質問紙法では学習到達度の低下で初めて検出される傾向が高く、学習モダリティーの困難さを30~40%程度検出するにとどまった。一方ROC解析の結果、読み流暢性課題の一つである「単語連続読み課題」を用いた場合「読み書き」「聞く話す」の学習モダリティーの低下児童の検出が最も高かった(感度.792、特異度.806 曲線化面積.846)。(3)心の理論に関与する言語モダリティーの検討:今回の1.2年次を対象としてToM課題を実施し、通過未通過に影響を及ぼす言語機能面について検討した。結果、統語の段階がToM通過に対する独立変数として有効であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学力と学習モダリティーの関係についてはある程度明らかにすることができ、各検査の基準値作成も順調に進んでいる(結果の一部は本年度学会発表エントリー済)。この知見をもとに今回問題を認めた児に対しては個別支援計画を策定するための基準値作成も完了した。さらに一昨年度実施していた予備調査での学習モダリティ―の結果と本年度のNRTの結果から1年後の学習到達度を予測する因子についてもターゲットが決まった状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
方針は以下の三点に集約される。 方針1:今後本年度の研究結果をもとに、学習到達度(学力)に影響を及ぼす可能性の高い課題を抱える児童をピックアップし個々の支援計画を策定する。方針として1)障害された学習モダリティーへの直接支援2)二次障害軽減のために学校教育場面で担当教諭が集団の中で実践できる間接支援(環境調整を含む)について1年間実践を行い、客観的に学習到達度や中間変数に対して効果を検証する。方針2:合わせて学習障害早期発見のための簡便な検出ツールの作成を行う。すでにあるスクリーニングテストよりより低学齢で感度の高い検査について検討し、実際に新規小学校においてその感度特異度を検証する。方針3:学力に直結する学習モダリティ―の障害についてその背景となる認知機能障害について広く検出を可能とする方法を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
概ね1.従属変数の聴取(学力テスト×500人分2教科)の実施費用、2.個別支援作成のための掘り下げテストに必要な1)検査キット(検査用紙印刷等の費用を含む)2)訪問のための旅費3)人件費、3.データ解析費用(解析PCや統計ソフト、文献)、4.学会発表および論文厚生費用(すでに全国学会3学会で本研究成果を自主シンポジウムを企画し、5学会での研究発表を予定)
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