研究課題/領域番号 |
23531287
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
小畑 文也 山梨大学, 教育人間科学部, 教授 (20185664)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ヘルスリテラシー / 小児がん / 初期症状 / 早期発見 |
研究概要 |
昨年度はいわゆる「発達指標」を得るために、健康な幼児を対象とした。対象は3、4,5歳児、各10名(男女各5名)計30名。基本的にはイラストを見せてその様子を説明してもらい、それをビデオ録画、当方で語彙の有無の判断をする。結果は、大まかには以下の通りであった。 3,4,5歳児の「症状」に関わる語彙の発達: ・頭痛、腹痛、切り傷等「痛み」に関わる語彙は3歳の時点で既にほぼプラトーに達している。・かゆみ、疲れ、発熱は加齢に伴い発達し、5歳の時点でほぼ獲得されるが、「疲れ」に関しては、3歳で2割、4歳で4割が獲得しているに過ぎない。・吐き気、めまい に関してはどの年齢でも十分な語彙獲得がなされているとは言えない。 白血病等小児悪性新生物の初期症状は、顕現的なものでは鼻血や内出血による痣などがあるが、同時に、疲れ、吐き気、めまい(貧血)を経験しているケースも多いと思われる。獲得の早い「痛み」を含め、内部感覚は、学習され獲得されるものであるが、経験の少なさ、また表現の難しさが「疲れ」「吐き気」「めまい」の語彙獲得を遅らせていると思われる。小児の悪性新生物は、これらの症状を伝えるすべがなく、突然倒れる等して入院、加療に至るケースが多い。 今回の調査では対象となった3~5歳、それ以前においてはこれらの症状を説明するための語彙が十分には発達していない。従って、幼児に関して、現状では周囲の大人の注意深い観察が必要となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現状では「症状」に関わるコミュニケーションの発達指標の把握を目的としている。その点に関しては、発信側の情報は概ね把握できたと考える。現在、受信側の調査を行っており、その結果も近々でる予定である。 知的障害者に対する調査は24年度実施の予定であるが、調査のインターフェースの改善が必要であることが23年度の調査より分かったので、基本を変えずに調査意図が理解できるものを作成中である。 上記のように調査基盤はほぼ完成させることができたので、おおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画時はヘルスリテラシーを概念発達の視点から見ることを一つの目的としていたが、東日本大震災とその後の原子力発電所の事故により、よりプラグマチックな方向にシフトさせている。 具体的には、今後の増加が予想される「小児がん」の日常生活での早期発見を目的として、調査対象概念も「症状」に絞り、その「症状」の小児がんの初期症状として観察可能なものにした。また本人のリテラシーのみではなく、受け手の理解も重視し、疑いのある場合に、なるべく早期に医療機関につなぐことができることを現実的な目標としている。 さらに、なるべく早い時期に調査ツールの公開を行うために、紙媒体のみではなく、ツールの電子化、ネット配布を考えている。 医療の目が届くにくい日常生活の中で子ども、特にヘルスリテラシー弱者である知的障害児が発する自己の体調変化を、周囲の大人に分かる形で伝えることができること。当初の目的より具体的なものになったが、現状を考えると重要な課題である。 さらには、これらの調査を子どもにとって興味深く、簡便に、なおかつ統制された状況で行うためには、本年度用いた絵カード素材より、動きの表現等も必要となるためGIFアニメーション等を用いた課題提示方法の方が有効であると思われ、タブレットPC等で開発する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は学会が東京地区で行われることが多かったので、僅かなあまりがでた。これは本年度の旅費に充当する。来年度は、検査ツールの電子化のために可搬性の高いタブレット、あるいはノートPCが必要であり、その購入に使用する。調査結果をなるべく早い時期に公表するために複数の学会での発表を予定しており、その旅費に使用する。
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