最終年度になる平成25年度は、主題となる「知的障害児」を対象とし、過去の健常児のデータと比較する形で健康情報の処理、即ちヘルスリテラシーに関する調査を行った。 予備調査では、知的障害者(18歳)2名の日常生活の観察から、身体変調を訴える際の様子について調べたが、言語的な明確な訴えはなく、家族のみが分かるサインが中心であった。 そのため、現時点で知的障害児が、調査者に分かる形で身体変調を訴えることは多くの場合不可能であると判断し、本調査では知的障害児の母子、88組を対象とした質問紙調査を実施した。調査のターゲットとなった症状、事象は「腹痛」,「頭痛」,「発熱」,「喉の痛み」,「疲れ」,「怪我」の7つであった。 結果として、年齢が上がるにつれて言語による表出頻度が高くなる傾向は健常幼児と同じではあったが、その個人差は大きかった。また、子どもの様子から判断する親が、健常幼児では加齢とともに減少するのに対し、知的障害児は加齢とともに増加していた。これは、知的障害児の場合、周囲の大人の観察が健康の維持に不可欠であること、また、そのための大人の感受性も上がっていくことを示しているが、一方では、痛がったことはない、熱を出したことはない、疲れたことはない等と答える親も少なからずおり、子どものみではなく親等に対しても、ヘルスリテラシーに関する指導が必要であることが示唆された。
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