研究課題/領域番号 |
23531296
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
若松 昭彦 広島大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (70230919)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 音声理解 / 学習プログラム / 自閉性障害 |
研究概要 |
自閉性障害児・者は,他者の表情理解のみならず,音声からの他者感情の理解にも困難を有しており,そのための効果的な学習方法の開発が必要であると考えられる。ところが,彼らを対象にして音声からの感情推測能力の評価を行った実験的な研究はいくつか報告されているものの,音声理解の指導を実際に行った研究は少なく,標準的な学習教材も見当たらないのが実状である。そこで,本研究は,実用的な音声学習プログラムを試作し,自閉性障害児・者に対して実施しながら,教育や福祉の現場などでの実践に役立つ音声学習ソフトを開発することを目的とする。23年度は,学習プログラムに用いる音声刺激並びにテスト刺激の作成について,下記のような成果が得られた。1.学習プログラム用の音声刺激作成について 以前収録した多数の音声刺激を保育園児に聞かせて,各刺激の正答率を調べ,学習プログラムに用いる音声刺激選定のための基礎データを収集する作業を行い,その結果を論文としてまとめた(若松,2011)。そして,上記データと大学生による評定結果を比較したり,実際に音声を聴き比べたりしながら,開発中の表情理解学習プログラムに合わせた,1レベル10個×10レベル,計100個の音声刺激を抽出して,学習プログラム試作版に用いる音声刺激の配列を確定する作業を終了した。2.学習プログラム用のテスト刺激作成について プログラムの学習効果判定のためのテスト課題を作成するために,上記音声刺激とは別のモデル3名に依頼して収録した多数の音声群から,研究代表者が,評定作業に使う音声を抽出する作業を行った。その後,大学生による評定作業に用いる,音声刺激提示・記録用プログラムを,研究代表者がプログラミング言語を用いて作成した。そして,このプログラムを用いて,大学生27名による評定作業を行い,その結果に基づいてテスト課題に使用する音声刺激計20個の抽出を終えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記「研究実績の概要」に記したように,学習プログラム試作版に用いる音声刺激,テスト刺激の選定は,ほぼ予定通りに終了した。一方,音声刺激提示・記録用プログラムの作成を通じて,刺激のランダム提示や反応の記録・出力,ヒント提示や個人差への対応等の機能を開発・付加するという課題については,部分的な達成に留まった。具体的には,プログラミング言語としてHSPを用いた音声刺激提示・記録用プログラムを自作する作業の中で,刺激のランダム提示と反応結果のExcel出力が可能になった。また,このプログラムは今後の研究にも利用できるため,評定作業や,その結果得られたデータの処理に関する大幅な効率化が実現できる見通しとなった。 しかしながら,このプログラムを作成するために,相当の労力の傾注が必要だったことから,ヒント提示や個人差への対応など,より高度な機能を開発するためには,研究代表者の努力だけでは限界があり,さらに高度なプログラミング技術を持った企業などとの連携が必要なことが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように,音声理解学習プログラムを開発するためには,高度なプログラミング技術を有する企業などと協力することが今後不可欠である。現時点では,技術移転したソフトウェア開発企業と共同で開発中の表情理解学習プログラムのフレームワークを,音声理解学習プログラムに応用することが効率的であると考えられるので,24年度の研究経費の内訳を,本課題申請時点のものから変更し,プログラム作成を依頼する企業への外注費の比重を多くした。 今後は,ヒントや個人差への対応などの具体的内容について,研究代表者が,これまでの研究成果を基にアイデアを作成し,企業と連携した試作版の開発,実際の試行,試行結果に基づくプログラムの改修,再試行・・・のサイクルを反復しながら,プログラムの実用化を目指していくことになる。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度は,企業と共同で学習プログラムの試作版を作成し,完成した試作版を,県内外の学校や療育・福祉機関などの協力を得て,実際に自閉性障害児・者に試行する。そして,その結果に基づいてプログラムに改良を加える。そのため,研究費は,プログラムの試作・改修費として25万円,県外(福岡県)での試行のための旅費として10万円,データ記録用HDD購入費として5万円,計40万円の使用を計画している。
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