研究課題/領域番号 |
23531296
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
若松 昭彦 広島大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (70230919)
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キーワード | 音声理解 / 学習プログラム / 自閉性障害 |
研究概要 |
自閉性障害児・者は,他者の表情理解のみならず,音声からの他者感情の理解にも困難を有しており,そのための効果的な学習方法の開発も必要であると考えられる。ところが,彼らに対して音声理解の指導を実際に行った研究は少なく,標準的な学習教材も見当たらないのが実状である。そこで,本研究は,音声の学習プログラムを試作し,実際に自閉性障害児・者に対して実施しながら改良を加えていくことによって,教育や福祉の現場などでの実践に役立つ音声学習プログラムを作成することを目的とする。24年度は,プログラム作成に関する下記のような成果が得られた。 音声理解学習プログラムでは,モデルの顔が表示されず,声だけが提示されるモードもあるため,表情理解学習プログラムのヒント内容の一部変更を行い,音声理解学習プログラム用の新たなヒントを作成した。そして,23年度に作成した学習プログラム用の音声刺激(1レベル10個×10レベル,計100個),テスト用の音声刺激(計20個)と併せて,表情理解学習プログラムの開発を委託しているソフトウェア企業に,音声理解学習プログラムの作成を依頼した。 当初,ソフトウェア企業は,開発中の表情理解学習プログラムのフレームワークを,音声理解学習プログラムにそのまま利用することを考えていた。しかしながら,パソコンOSやハードウェアの急速な進化に伴う市場のニーズ変化に対応するため,Windows XPやVista用に開発した表情理解学習プログラムを,タブレット端末用のWindows 8で動作するように改良する必要が生じた。その改修作業は,学習記録機能と最新バージョンのMicrosoft Excelとのリンクがうまく動作しないことなどから,予定通りには進んでおらず,現在,Excelのバージョンに依存しない記録機能の作成等,プログラムの改修を行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」に記したように,パソコンOSの変更に伴うプログラムの移植作業が,当初の計画通りに進んでいないことが,上記の評価となった理由である。しかし,学習記録機能や学習中のユーザー表情の録画機能,音声理解学習プログラム用チュートリアル以外のプログラム本体部分は,ほぼ問題なく動作しており,学習記録機能等の作成・実装が済めば,学習プログラムの試作版が完成する。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように,現時点での試作版はWindows 8を搭載したタブレット端末で動作しているが,タッチパネル式で携帯性・操作性もよく,実用性の高さが実感できるものである。モデルの顔画像を表示するモードに切り替えることによって,より難易度の低い課題提示も可能になるため,本学習プログラムの適用範囲は広いと考えられ,学校現場などでのニーズの大きさが予想される。今後は,試作版の完成を急ぎ,学校・施設等での実際の試行,試行結果に基づくプログラムの改修,再試行などを経て,プログラムの完成,実用化を目指していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度は,企業と共同で試作版の完成を急ぎ,完成した試作版を,県内外の学校・施設等で実際に自閉性障害児・者に対して試行する。そして,試行結果に基づくプログラムの改修,再試行などを経て,プログラムの完成を目指す。そのため,研究費は,プログラムの試作・改修費として30万円,県外(福岡県)での試行のための旅費として10万円,試行用タブレット端末購入費として10万円,計50万円の使用を計画している。
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