研究課題/領域番号 |
23531298
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
立入 哉 愛媛大学, 教育学部, 教授 (90294777)
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研究分担者 |
花熊 暁 愛媛大学, 教育学部, 教授 (60172946)
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キーワード | 聴覚情報処理障害 / APD / 時間分解能 / Gap Detection Task / ギャップ検出 |
研究概要 |
本年度,APDに特徴的な3つの評価で構成された簡易検査を通し、APDにおける聴覚情報処理の特徴を検討した。簡易検査で行った検査項目は「Gap Detection Test」「Competing Word Test(CWT)」「Auditory Figure & Ground Test(AFG)」である。行動や学習に問題がない児童群(Norm群)、ADHDと診断された群(ADHD群)、学習に困難がある群(LDs群)に適用し、学習上の観点から理解を深めるため「SIFTER」も実施した。これらの結果から聴覚情報処理の様態を検討した。Gap Detection Testでは、各群の有意差はみられなかった。CWTでは、Norm群とLDs群には有意差がみられた。AFGでは、3つのすべての群で天井効果が現れ、有意差は見られなかった。 加えて,他の児童とは異なる結果となったNorm群のI児、LDs群のD児の2児とも、天井効果に関係なく、AFGの結果がCWTの結果より正答率が低かった。 Norm群のI児においては、Gap Detection Test、Competing Word TestにはNorm群の平均範囲内であったが、AFGの結果からみると、雑音下での聴取に困難があると想定され、今後、より精密な検査の必要があると考えられる。 LDs群のD児においては、APD簡易検査でGap Detection testの検査方法が理解できず、SIFTERの総得点も44点で低い点であった。担任からの情報によると、注意への困難や聴覚的行動でも困難がみられる。しかし、本研究のCompeting Wordでは高い正答率をみせた。今回、他の群細な知的能力に関する評価を行っておらず、さらなる質的評価が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ギャップ検出の課題作成,他の検査とのバッテリもでき,被験児に実施できている。 検査結果の分析も行うこともできている。 さらにURLで公開できるに至っている。
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今後の研究の推進方策 |
Competing Word Testについては、Norm群とLDs群間に有意差があり,両耳同時情報処理になにかしらの躓きがあるとも考えられた。また,ギャップ検査では有意差が見られなかった。ギャップ検査課題をも簡易検査としたため,検査の応答に課題があるのか,両耳同時処理機能における困難さと同様,時間処理機能に課題があるのか,判然としなかった。LDs/ADHD群では注意・集中の持続困難が伴い、精密な検査が困難である。ギャップ検出検査と比較を行うためにも,「Competing Word Test」「Auditory Figure & Ground Test」の再作成を行い,LDs/ADHD群でも回答ができ,評価ができるテストバッテリーの作成が急務だと考えている。 上記のように,検査バッテリは構造上,できあがっているものの,今回の研究課題であるギャップ検出については,簡易検査としたため,検討が十分にできなかった。回答が容易で,かつ検出力がある検査方法を作成することが必要である。 研究の総括を行うべき年度となっており,言語体系が似ている韓国のギャップ検出研究に関して,研究交換を行うことで,母国語による検出力の違いについて考察し,どのような聴覚情報処理が背景となって,ギャップ検出力を変化させるか総合的に考察したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
「Competing Word Test」「Auditory Figure & Ground Test」の再作のため,熟達話者による語音刺激の再作成(録音のし直し)を行う。このために謝金を必要とする。 ギャップ検出検査を再作成し,標準閾値を求める必要がある。必要なサンプル数を集めるために実験協力者を必要とし,謝金を用意する必要がある。 研究の総括を行うべき年度となっており,今までの研究成果を日本聴覚医学会にて発表する。また,研究推進のための諸費,総括のために諸費を見込んでいる。
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