研究課題/領域番号 |
23531300
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
高橋 信雄 愛媛大学, 教育学部, 教授 (70132719)
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キーワード | 人工内耳 / 聴覚障害 / 言語情報処理 / 聴覚情報処理 / 機関間連携 / チームアプローチ |
研究概要 |
1,人工内耳装用児のコミュニケーションーモードは、可能な限り聴覚の受容を目指している実態が明らかとなった。しかし、学校や親のニーズは、寄り容易に習得できる手話的表現を多用する傾向があることが明らかとなった。現在では、人工内耳装用幼児の半数以上が、聾学校幼稚部に係わりを持っており、共通コミュニケーションモードである手話環境下におかれている。 2,J.COSS日本語理解テストを実施したところ、従来から言われているように、名詞は十分に理解できるが、3語文以上になると語順や受け身文などの処理に困難さを抱える子どもが多かった。また、語用的処理も直接的表現でないと通じないことが多いことが分かった。 3,人工内耳装用児の聴覚情報処理については、受容としての音が入ること(音がきこえることにより行動の安定化が認められた)と入力された音情報から必要な言語的情報の処理(内容理解)への課題がより明らかとなった。しかし、言語発達に遅れのある装用児や他の障害を併せ持つ装用児の場合、手話や絵により意味情報を先行させた指導が一定の効果をもたらし、聴覚情報を意識することにより、聴覚活用も併用できる可能性が高いことが示唆された。 4,県下の幼稚園から高等学校までの聴覚障害に関する実態調査を行ったところ、学童期の人工内耳装用児は音環境や情報保障などでは、適切な支援を受けていることが明らかとなった。 5,個別のケースカンファレンスと平行して、当該児に関わる指導機関間のネットワーク会議を開催し、問題点を整理した。連携プログラムを試行する際には、指導内容面での検討および各機関が担う役割の分担、手指使用時の聴覚の意識的使用を再確認しながら協働的に指導に関わるチームアプローチの体制の必要性を確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・各データについては収集途上である。 ・日本特殊教育学会にて引き続き学会シンポジウムを開催した。また、日本聴覚医学会にて学会発表を行い、関係者からの意見を聞くことができた。さらに、公開講座で問題点を論議する機会を設けることができた。 ・両側人工内耳および1歳代の人工内耳幼児での確かめを実施中である。
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今後の研究の推進方策 |
・各データは、年度計画に基づき引き続き収集する。新たな装用乳幼児についても同様にデータ収集する。 ・日本特殊教育学会でのシンポジウムを開催し、機関間の連携の在り方と方策を探り、医療・教育・福祉を含めた統合的な支援システムの方向を検討する。 ・公開講座を主催し、研究成果のまとめと今後の指導への継承をはかる。 ・関係機関間のネットワーク会議の開催と内容面での深化をはかる。特に県下のネットワークの協働へのさらなる強化をはかり、指導プログラムの共有意識を高める。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画に基づいた資料収集および最終年度のまとめのための整理を行う。そのための費用と、種々の活動の実施に伴う消耗品等の購入を予定している。
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