研究課題/領域番号 |
23531301
|
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
北添 紀子 高知大学, 教育研究部医療学系, 講師 (70284437)
|
研究分担者 |
寺田 信一 高知大学, 教育研究部人文社会科学系, 教授 (00346701)
平野 晋吾 高知大学, 教育研究部人文社会科学系, 研究員 (90571654)
|
キーワード | 広汎性発達障害 / 就労支援 / インターンシップ / 職業イメージ / 大学生 |
研究概要 |
本研究は、広汎性発達障害の疑われる大学生に対する就労支援のワンステップとして、 学内でのインターンシップでの経験とそのフィードバックが、職業意識の形成につながるかどうかを検討するものである。前年度に引き続き、大学内の参入企業である大学生協で短期間のインターンシップを実施した。インターンシップ前には、学生の特性によりインターンシップ中に困難が予測されることは学生の了解を得て担当者に伝えた。また、学生が強く苦手意識を持っている職種は避けるように担当者に依頼をした。インターンシップの第1日目終了後には、学生、担当者で振り返りを行い、困難となることはないか検討した。参加学生は、アルバイトやインターンシップ経験がなく、参加前には仕事ができるのか不安を訴えていた。しかし、参加後には、就労に対してポジティブな意見が得られた。 内容も期間もステップアップさせたインターンシップとして、大学生協でのインターンシップを終了した学生のうち希望者に対して、大学外の企業で10日間のインターンシップを行った。大学生協でのインターンシップと同様に、学生から同意が得られた内容の情報提供を行った。また、実習場所にはJC-NET主催「ジョブコーチ養成研修」を受講したジョブコーチの派遣を行い、実習後にはジョブコーチとの面談で作業状況のフィードバックを行った。 就職面接の対策の一環として、立ち振る舞い、受け答えなど、面接のマナーに限定した講座を行った。マナーの専門家の外部講師を招へいし、実習、ロールプレイを中心とした講座を行った。尚、インターンシップ、マナー講座とも参加者は広汎性発達障害の疑われる学生には限定していない。 他大学の就職支援の状況を把握し、今後の当大学の支援の参考にするため、7大学、特例子会社1社の訪問を行い、支援体制の聞き取り調査を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学内のインターンシップはほぼ計画通り実施できた。インターンシップは、大きな困難もなく、途中でドロップアウトをする学生はいなかった。一例ごとにインターンシップ先である大学生協と打ち合わせを行ったため、学生の特性に配慮した対応が行えた。参加学生からはインターンシップに対してポジティブな評価が得られた。インターンシップを通じてその後の職業選択を変更したケース、アルバイトなど次のステップへと移行したケースもあった。 次のステップのインターンシップとして、期間を長くし、大学外の企業でのインターンシップを計画実施した。学生の希望業種に合わせて企業にインターンシップの協力を依頼した。これまでに次のステップの希望者は少ないが、これは学内インターンシップのあとアルバイトを希望する学生が多いこととも関連があるかもしれない。 前年度ジョブコーチの雇用が出来なかったので、ソーシャルワーカーとしてのキャリアのある人材にJC-NET主催の「ジョブコーチ養成研修」を受講してもらい、新たなジョブコーチとして養成を行った。ジョブコーチの養成が年度の後半となったため、企業や大学生協でのインターンシップへの参加が遅れたが実施には支障をきたしてはいない。 新たな試みとして、就職面接への対応のためのマナー講座を実施した。2クールを終了させたかったが、1クールしか終了できなかった。講師を探すのに時間を要し、2クール目が春休み期間になるため、2クール目は次年度からスタートすることとした。先進的な取り組みをしている大学への訪問調査も終了した。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度になるため、これまで行ってきた内容を振り返り研究のまとめを行う。これまで行った学内でのインターンシップは、一定の効果が得られたことから、今後も継続して行う予定である。現時点でインターンシップによる効果は、1.就労に対する意識付けを行い、複数の職種を体験することで、職業選択を考えるきっかけとなった。2.アルバイトやインターンシップがこれまで未経験であった状態から一歩踏み出したことにより、自信が得られ、就労を身近に考えられるようになった。が考えられる。 次年度は、これまでのインターンシップを振り返ることにより、効果を検証し、大学で可能な就労支援を検討する。また、ケース数は少ないと予想されるが、学内インターンシップ終了後の学外でのインターンシップの方法、効果についても検討を行う。 本研究では、研究助成を活用してジョブコーチの養成を行った。インターンシップにおいてジョブコーチを導入し、効果的な支援を行うためには、どのような工夫が必要なのかについても検討も行いたい。 また、就職活動中の面接への対応として、ロールプレイを中心とした受け答え、立ち振る舞いに限定した面接マナー講座を行った。広汎性発達障害のある人の面接の苦手さは、従来より指摘されている。本講座が自閉症スペクトラム特性のある学生の面接スキルを上げるために、効果がありそうなのか、あるとすれば、どのような点に効果がありそうなのか、その検証も行っていきたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、平成23年度、24年度に引き続き、研究費は人件費と旅費を中心に使用する予定である。24年度に行う予定だった事業が遅れているため、前年度の人件費が未使用となり繰り越された。人件費は、心理職、ジョブコーチ、マナー講座講師、研究支援者としての事務補助者に対して支払う予定である。心理職は、これまでに引き続き、インターンシップ前後の面接、テスト、テストのフィードバックを行う予定である。ジョブコーチは、インターンシップ先に出向き、作業分析を行い、作業の状況について客観的な評価を行う予定である。マナー講座講師は前年度に引き続き、就職面接講座を行う予定である。データ整理のために、前年度に引き続き事務補助者を雇用する予定である。 また、報告書の作成に対しても研究費を使用する予定にしている。 さらに、情報収集、および成果発表のために旅費の使用を計画している。 尚、現在のところ、高価な備品等の購入の予定はしていない。
|