研究課題/領域番号 |
23531303
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
古賀 精治 大分大学, 教育福祉科学部, 教授 (20225395)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | ダウン症 / 運動発達支援プログラム / 姿勢・運動発達チェックリスト / 運動力学的分析 / 特別支援教育 |
研究概要 |
本研究ではダウン症の代表的な4つの特性、すなわち筋緊張低下症、知的発達の遅れ、表出言語の遅れ、多様な合併症(小奇形)の頻度の高さのうち、筋緊張低下症に起因する姿勢や運動発達の遅れや特異性に焦点を絞り、乳児期から成人期までのダウン症児・者の特徴に対応した姿勢・運動発達支援プログラムを開発し、その効果をダウン症児・者のための姿勢・運動発達チェックリスト及び運動力学的分析法を用いて検証することを目的とする。 初年度の平成23年度はダウン症児・者の姿勢や運動の発達特性を踏まえた新たなチェックリストの作成に重点を置いた。まず文献研究及び17年間の筆者らによる指導記録の分析をもとに、健常児の定型発達をモデルとした既存の発達検査には含まれていないダウン症児・者の姿勢・運動の特徴を中心とした66項目から成るチェックリスト試案1を作成した。この試案1を健常児59名とダウン症児・者8名に適用した。その結果から、健常児とダウン症児・者で差がみられない項目の削除、項目の追加と細分化、検査場面や教示の再検討を行い、59項目から成るチェックリスト試案2を作成した。さらにこの試案2を健常児74名とダウン症児・者30名に適用し、項目の妥当性や検査場面における評価のしやすさ等について検討した。その分析結果に基づき、最終的に56項目から成るチェックリストの成案を作成した。 また平成23年度末に購入した圧力分布測定装置の試験的測定を試みた。その結果、これから検証を重ねなければならないが、例えば歩行時、健常者であれば接床から離床までの間に踵から指先に移動する立脚の足底圧中心が、ダウン症幼児ではほとんど移動しないまま立脚が離床する等の歩き方の特徴が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ダウン症児・者のための姿勢・運動発達チェックリストをほぼ完成できたこと、そして運動力学的分析を行うために平成23年度末に購入した圧力分布測定装置の加重測定範囲や分解能が歩き始めのダウン症児から成人したダウン症者までの立位や歩行のデータを測定するのに適していることが確認できたことにより、平成23年度の研究計画をおおむね達成できたといえる。その成果は、平成24年度以降、ダウン症児の姿勢・運動の実態把握や指導効果の測定を行う上で、大いに役立つと期待される。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず、筆者が大分大学(現所属)に赴任以来18年間、大分県ダウン症連絡協議会の依頼を受けて実施してきたダウン症児・者の姿勢や運動面を中心とする発達支援に関する指導実践の記録をまとめ、その技法を精査・精選し、体系立った姿勢・運動発達支援プログラムの試案を作成する。そのプログラムを、平成24年度は主に乳幼児期のダウン症児、平成25年度は主に学齢期から成人期のダウン症児・者に適用し、その効果を既存の発達検査法とともに平成23年度に作成したチェックリストにより分析する。さらに圧力分布測定装置を用いることで、ダウン症児・者の姿勢制御機能や歩行機能の特徴を明らかにし、その上で平成24年度後半より上記の姿勢・運動発達支援プログラム(試案)の効果を運動力学的視点からも分析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度におけるチェックリストによる測定結果より、ダウン症児・者は上体のひねりの動きが不得手なこと、つま先立ちができないこと、階段昇降が苦手なことなどが示唆された。次年度以降、そのメカニズムについて運動力学的に分析するため、新たな器具、例えば圧力分布測定装置を組み込むことができる階段状の踏み台の作成費用等が必要になる。また平成23年度の研究成果を日本特殊教育学会または日本リハビリテイション心理学会において発表する予定である。そのための旅費が必要となる。なお平成23年度は最終的に当初の予定より安価に物品を購入できたため、実支出額が所要額を下回った。
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