研究課題/領域番号 |
23531304
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
衛藤 裕司 大分大学, 教育福祉科学部, 准教授 (00284779)
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研究分担者 |
肥後 祥治 鹿児島大学, 教育学部, 教授 (90251008)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 自閉症 / NPO / PO / IEP / 関連サービス / 特別な教育 / 機能的支援 / ABA |
研究概要 |
初年度である平成23年度は,まず,学校へのサービス提供を担っている外部専門機関(学校区教育委員会・各種NPO等)の役割の構造を,米国において収集したIEP(個別指導計画)の分析を通して明らかにした。そ の結果,自閉症において,(1)行動療法士(Behavior Therapist)による「応用行動分析(ABA)」と「インクルージョン・プログラム」,言語聴覚療法士(Speech Therapist)による「聴覚統合療法」と「言語療法」,作業療法士(Occupational Therapist)による「感覚統合療法(SI)」等の関連サービス(Related Services)が提供されていた。 このうち,co-medicalにより提供される関連サービスは,「医療的教育サービス(例;Educational OT)」の形態を採っているものの,治療教育側面の強いサービスであった。最も多く利用されていた「応用行動分析(ABA)」は,治療教育的側面の強い内容と適応行動的側面の強い内容に分類され,適応行動的側面の内容のうち,場面般化を目標(goal)とした場合において,通常学級における機能的支援の内容が最も明確に記述されていた(研究1)。 これらの関連サービス(Related Services)の提供時間数は,自閉症状・年齢と相関的な関係にあり,自閉症状が重く年齢が低いほど治療教育的なサービスが多く,自閉症状が軽く年齢が高いほど適応行動的なサービスが多くなっていた(研究2)。機 能的支援プログラム移行へのアセスメント内容と方法に関する統計的検討を行った結果,(1)アセスメントの独自性と治療教育的目標,(2)保護者のニーズと適応行動的目標,(3)インクルージョンの程度と自閉症状の程度,(4)年齢と言語的サービスの量等の構造が含まれていることが明らかになった(研究3)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載していた平成23年度予定の3つの研究が滞りなく,終了したため。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度以降は,支援サービスを提供する柱である専門NPO等と機能的支援の構造分析を中心にすえる。特に,外部専門機関のもつ学校(特に,Learning Center)へのプログラム提供に関する内容分析を行う。そのため,学校へのサービス提供のために外部専門機関(NPO・PO等)が,どのようなサービス・プログラムをもっているのかということに関する分析を行う。また,このことと関連し,自閉症に関して,どのようなプログラム提供が多いのか,関係するコスト等はどの程度であるのかということに関しても実態把握を行う。具体的には,以下の通りである。 1)特別な場と通常学級の中間に位置するラーニング・センターにおける機能的支援プログラムの利用率の算出 2)通常学級担任・ラーニング・センター担当教員に対する機能的支援プログラム質問紙調査(因子分析) 3)NPOにおける人的・物的コストの分析(年間収支表の収集)
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の3つの研究課題へのアプローチとしては,設備備品費に計上した書籍及び先行研究を総合し,パソコンによりインターネットを通じて,各種NPO・POのホームページ又各国教育省,教育委員会関係の資料の一部収集を継続する。 これと並行して,IEPの収集及び各学校のラーニング・センター,各種NPO・POに関する情報を収集するため,現地での実地調査を行う必要がある。そのため,海外旅費を使用する予定である。IEPは,単なる個別指導の計画書ではなく,厳密には,学校と生徒・保護者の間の法的拘束力をもつ「契約書」である。現在,保護者の許可を得て46程のIEPを所有しているが,さらにデータの精度を上げるため,さらに海外において直接,IEPの収集を継続する。 本研究は,調査地であるアメリカ・ロサンゼルスは「NPOの種類の多様性」,イギリス・ロンドンは「日本の特別支援教育のモデル地域」,カナダ・エドモントンは「地域密着型教育の先進地」であるという理由から選定されている。 これらの訪問先でのインタビューは,許可が得られれば,ビデオ録画する予定である。このためのビデオカメラ・ICレコーダー・リニアPCMと一部関連ソフトは,平成23年度予算で購入済みであるが,さらに必要な関連ソフトを購入する予定である。 なお,現在は特別支援教育の進展が1年単位で著しく異なるため,関係学会等における情報収集及び国内NPO・PO訪問のため,国内旅費を使用する予定である。研究成果の一部は,日本発達障害学会におけるシンポジウム(企画者 衛藤)と日本特殊教育学会で発表するよていであり,このためにも国内旅費の使用を予定している。また,その他の成果公開として,平成23年度予算において,ホームページの一部を製作し始めた。さらに,必要な内容を平成24年度予算で追加し,平成25年度予算で完成させる予定である。
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