科研費による研究「教職志望学生の行動観察力の可視化による力量形成」の研究では教職志望の学生を対象に方法論的な研究に着手した。そこでは,学生自身が参加したロールプレィ場面を対象にクリッカーを用いて可視化グラフ資料を作成し,そのグラフから,ふり返りのポイントを抽出した。そのポイントのビデオ映像の再生を通して,学生自身が主体的に振り返る手がかりを提供している。この研究において導入したテクノロジーは,中島が開発した、授業のふり返りシステムをベースにしている(中島 平、2008)。 研究の結果、次のことが明らかにされた。「関係力育成プログラムを支える教育評価法に関する研究(日本教育工学会誌2011)」では日常の関係力育成プログラムによる実践をPF-NOTEプロトタイプを活用して評価し、その評価の有効性を明らかにした。「教員養成系大学院におけるクリッカーを活用した臨床観察実習の効果(日本教育工学会論文誌2012)」では、クリッカーを活用した臨床観察実習を実施し、この学習の有効性を、①「意図的観察」を支援する学習効果、②「個人内一貫性」が身についていないことを自発的に認識できるという学習効果、③「ボタンをおす」という簡単な行為で、同時に複数の観察者の視点を可視化することにより、学習者が他者の視点に気づけるという学習効果の3点から明らかにした。また、「子育て支援の関係力育成プログラムに関する研究(学校臨床心理学研究、2013)」の研究では学生たちが関係力育成プログラムを通して行動観察力を高めていくプロセスをクリッカーを用いて明らかにした。さらに、「特別支援教育の授業におけるクリッカーを活用した学生の行動観察力に関する研究(コミュニケーション研究、2013)」では、特別支援教育の授業を受講した学生のクリッカーによる可視化グラフの資料を通して行動観察力の特徴を考察した。
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