研究課題/領域番号 |
23531307
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研究機関 | 帝京平成大学 |
研究代表者 |
瀬戸 淳子 帝京平成大学, 健康メディカル学部, 教授 (70438985)
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研究分担者 |
秦野 悦子 白百合女子大学, 文学部, 教授 (50114921)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 言語・コミュニケーション能力 / 幼児期 / 評価指標 / 特別ニーズ保育児 / 言語支援 |
研究概要 |
本研究の目的は、幼児期の保育・教育生活の中で必要とされるコミュニケーション能力の評価指標を作成することである。保育・教育の中で必要とされる幼児期のコミュニケーション能力を評価し、具体的な支援に結びつけていくには、子どもの言語・コミュニケーション能力を、保育・教育の集団場面でのマクロ分析、個別の検査や談話場面等でのミクロ分析を通して、双方向から評価する視点が必要と考えられる。そこでまず明らかな知的遅れはないが、行動面・社会面での保育困難が顕著な3~5歳の特別ニーズ保育児580名を対象に実施された実態調査から、保育者が保育場面でどのような言語・コミュニケーションに関する困り感を持っているかを、保育者の一番気になることとして自由記述された内容から分析した。その結果、特別ニーズ保育児の40%余りの子どもに、言語理解力の弱さ、指示の入りにくさ、話に対する注意の弱さ、会話の成立のしにくさ、同年齢児とのやりとりの弱さ、場面に合わない発話、言語表現力の乏しさ、表出語彙数の少なさ、発音・流暢性・声のコントロールの問題などが指摘された。 次に、保育場面で言語・コミュニケーション行動での困り感がみられた子どもを対象に、言語発達検査(LCスケール)、理解語彙検査(PVT-R)、文復唱課題、日常的質問、ナラティブ課題(事象やルールの説明、状況絵の説明、ストーリーの説明)、知能検査などを予備研究として実施した。その結果、知的な遅れはなく語彙や統語面は年齢相応の力であっても、談話レベルの文理解やナラティブの能力の弱さが保育集団での困り感につながっていると推測される例など、個々の言語・コミュニケーション能力の特性を明らかにすることが支援にとって有効であることが示唆された。次年度は特別ニーズ保育児の他、健常幼児・児童の言語・コミュニケーション能力について個別データの収集を行なう予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
23年度中に健常幼児・児童を対象に言語・コミュニケーション能力の個別調査を予定していたが、調査で使用する題材の選択、および健常児データ収集のための予備研究に時間がかかり、データ収集が遅れたため。また、コミュニケーション能力のマクロ分析場面のデータ収集を予定していた特別ニーズ保育児が当該年度においては予想より少なかったため。
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今後の研究の推進方策 |
幼児期のコミュニケーション能力評価指標作成に向けた基礎資料の収集を引き続き行なう。一つは保育者が保育困難を感じ、保育巡回相談の対象となった3~5歳児クラスの特別ニーズ保育児の集団保育場面、個別検査場面のビデオ記録と発話記録から、一方的に主張する、会話の適切な進行を子どもが妨げるなどのコミュニケーション不適切場面とコミュニケーション修復場面を抽出し、データを集積する。 もう一つは24年度の早期に、4,5歳児クラスの健常幼児と小学校低学年児童を対象に、言語・コミュニケーション能力に関する調査を実施しデータを収集する。収集された談話場面のデータについては、語り場面は、語りのテーマや内容、生産性、結束性、整合性等のナラティブ分析、語用論的分析を行なう。会話場面は、非言語的コミュニケーションや会話のターン、話題の開始、会話の修復等について語用論的分析を行う。これらの分析をもとに、4,5歳児クラスの健常幼児と小学校低学年児童の談話能力の発達を明らかにし、特別ニーズ保育児の能力との比較分析を行う。 収集されたデータ分析の結果をもとに国内外の文献を参考にしながら評価項目の選定を行い、予備調査の結果をもとに、コミュニケーションの評価指標を完成させ、幼児期にどのようなコミュニケーション支援が必要かを提案する。
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次年度の研究費の使用計画 |
健常幼児と小学校低学年児童に対する調査およびデータ収集・分析が遅れたために、調査補助、調査資料の入力、分析の補助を行う研究協力者、研究補助者への謝金等の人件費、その他調査の実施、調査分析に関わる物品費、消耗品費等が次年度に残された。23年度および24年度をあわせた研究費の使用計画は以下の通りである。・物品費:約40万円 調査に必要な検査用具、ビデオ分析のためビデオ関連機器購入。ビデオ編集作業、資料分析のためのパソコン関連機器の購入。書籍の購入。 ・旅費 :約30万円 研究成果公開のため学会発表を行うための旅費。・人件費・謝金:約60万円 ビデオ記録の補助、ビデオ記録のトランスクリプションの作成、ビデオの編集分析、および調査資料の入力と分析の補助を行う研究協力者、研究補助者への謝金。・その他:約30万円 会議費、調査のための印刷費と通信費(切手類)。
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