研究課題/領域番号 |
23531308
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研究機関 | 聖徳大学 |
研究代表者 |
家近 早苗 聖徳大学, 児童学部, 准教授 (40439005)
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研究分担者 |
石隈 利紀 筑波大学, 人間総合科学研究科(系), 教授 (50232278)
熊谷 恵子 筑波大学, 人間総合科学研究科(系), 教授 (10272147)
柘植 雅義 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所, 教育情報部, 上席総括研究員 (20271497)
田村 節子 東京成徳大学, 臨床心理学部, 准教授 (40549151)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ほんものチーム / 校内委員会 / 発達障害 / 特別支援教育 |
研究概要 |
本研究では、発達障害の子どものための「個別の子どもへの援助チーム」と「校内委員会による援助チーム」を対象として、「ほんものチーム」を構成する要因および「ほんものチーム」と「にせチーム」になる要因について明らかにすること、これらの「援助チーム」への参加者に及ぼす影響について明らかにすること、「援助チーム」評価リストを作成し、その用のシステムを開発することを目的とした。 23年度の研究計画としては、発達障害の子どもへの支援において、「個別の子どもへの援助チーム」及び「校内委員会による援助チーム」への参加者(教師・SC・保護者など)に対する半構造化面接を実施し、「ほんものチーム」と「にせチーム」を促進する要因を明らかにすることであった。そのため、高知県の2つの中学校に調査を依頼し、平成23年8月と平成24年1月に校内委員会の機能がどの程度発揮されているかということを把握するために、質問紙による調査を実施した。さらに、その結果を2校にフィードバックし、校内委員会に参加することによって、校内委員会の実施状況を詳細に把握することができた。24年度も2つの学校の校内委員会について継続して調査を実施することになっている。また、本研究に関連する論文を投稿し、平成23年12月、『学校心理学研究』第11巻で公刊することができ、成果の一つをあげたといえる。 研究協力者との打ち合わせは、メールを中心に行い、平成24年2月に会議をもち、23年度のまとめと今後の研究の方向性について話し合った。また、先行研究や文献からは、本研究が明らかにしようとしている校内委員会の機能に関する研究はみられず、本研究の重要性について確認することができた。さらに、今後の研究の方向性と平成24年度に実施する調査の項目について検討し、対象校の候補について確認し、調査実施に関する役割分担を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度は、校内委員会が「ほんものチーム」と「にせチーム」となる要因について明らかにする予定であった。小・中・高等学校において実践を行っている特別支援教育コーディネーター・教師に対して半構造化面接を実施し、校内委員会や個別の子どもへのチーム援助を行うことが効果的であった事例と、そうでなかった事例について質問し、そのプロセスの中から「ほんものチーム」と「にせチーム」を促進する要因について検討し、併せて「ほんものチーム」に関する評価リストの項目を抽出する計画であった。 そこで、高知県内の2つの中学校に協力を依頼し、半年に1回のペースで学校を訪問して、校内委員会、学校環境などについて情報収集を継続している。しかし、研究計画では、教師に対する半構造化面接を実施する予定であったが、各校の校内委員会に参加し、その実施状況を把握することにとどまっている。この点については、調査を依頼した学校の教職員の大幅な異動があり、校内委員会に継続して参加している教師の数が少なくなってしまたため、十分なデータを得ることができないと判断したためである。そこで、半構造化面接については平成24年度に実施することにした。このように半構造化面接の実施が遅れていることが影響して、「ほんものチーム」と「にせチーム」の要因および評価リストの項目作成がやや遅れ気味になっている。しかし、先行研究については、特に欧米のIEPチームについて進めることができた。 また、研究の成果を国内外の学会等で発表することを予定していたが、進行状況がやや遅れていたため当初予定していた学会等での発表ができなかった。しかし、NASP(National Assosiation of School Psychologists)には参加し、アメリカの特別支援教育の最新の情報を得ることができた。24年度はNASPでのポスター発表を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、まず、今年度に実施できなかった高知県の2つの中学校での教師へのインタビューを実施し、その結果と先行研究・資料の整理・分析によって、「ほんものチーム」であることを評価する評価リストのチェック項目の作成を行う。作成した「援助チーム」の評価リストを用いて質問紙による調査を実施する。その際、学校の特別支援教育推進体制のレベルを把握するために、柘植・飯島・小西・中川・松田(2008)による評価リストを用いて、学校の状態をチェックし、「ほんものチーム」との関連についてエコロジカルアセスメントの視点から検討する。さらに、「ほんものチーム」への参加者が受ける影響について明らかにする。(1)教師を対象とした調査:作成した「ほんものチーム」要因のチェック項目及びそれと関連する要因のチェック項目を用いて、「ほんものチーム」を促進する要因、「ほんものチーム」であること、そこに参加する教師の意識の変化、学校の心理教育的援助サービスとの関連について検討する。(2)学校を対象とした調査:(1)で得られた結果について学校へのフィードバック及び面接を実施し、調査対象となった学校独自の要因について明らかにすると同時に、学校ごとの独自性の比較を行う。(3)同時に、(1)でインタビューを実施した学校での「個別の援助チーム」「校内委員会による援助チーム」への参加者に対する意識の変化について、半構造化面接と質問紙による調査を実施する。 学会等での発表については、平成24年7月にISPA(International School Psychology Association)でのポスター発表を予定している。また、11月には教育心理学会でのポスター発表、さらに平成25年2月にはNASP(National Assosiation ofSchoolPsychologists)でのポスター発表をする計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に引き続き、本研究の理論的基盤構築に関連する文献の購入をする予定である。平成23年度はアメリカの文献を中心に購入したが、さらに北欧などの特別支援教育の先進国の文献を購入し、情報を収集することによってさらに研究を進めていきたいと考えている。 平成24年度の調査は、教師を対象とした面接による調査と郵送によって依頼・回収する質問紙による調査を予定している。まず、チーム支援を実施している学校を訪問し、教師・SC・保護者を対象としたインタビューを実施する。そのため、2日間程度の滞在の旅費(国内旅費:高知県、神奈川県、茨城県、埼玉県各2回)に使用する。また、質問紙調査にかかる印刷代、用紙代、郵送料、データ入力のためのアルバイト雇用にかかる人件費として使用する。 旅費としては、研究打ち合わせのための交通費、研究成果を国内の関連学会・機関において公表するための旅費等に使用する。平成24年度は、日本LD 学会(10月)、日本教育心理学会(11月)、日本学校心理学会(10月)でポスター発表を予定している。また、海外の学会での発表は、7月にISPA(International School Psychology Association)、平成25年2月には、NASP(National Assosiation of School Psychologists)の各学会において、ポスター発表、口頭発表での参加を予定している。 23年度に発生した繰越金は、研究がやや遅れていたことから、23年度は海外の学会での発表を見送ったためにである。そこで、24年7月のISPA(International School Psychology Association)の大会での発表をすることにし、繰越金はその旅費に使用することにした。
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