研究課題/領域番号 |
23531309
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
鈴木 牧彦 北里大学, 一般教育部, 教授 (90226548)
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研究分担者 |
柴 玲子 北里大学, 医療衛生学部, 助教 (70406908)
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キーワード | 特異的言語発達障害(SLI) / かき混ぜ文言語課題 / 関係節文の理解課題 / ワーキングメモリー / 知能検査 / 言語機能検査 |
研究概要 |
平成24年度は,開発中の言語理解課題の信頼性,妥当性を検討するための予備実験を前年度に引き続き実施した。前年度では健常成人(大学生)を対象としたが,当年度には本来の研究対象である児童,幼児を対象に加えた。その結果,当初の研究実施計画に示した言語課題にはいくつかの問題点が見出されたため,検査課題の見直しをおこなった。まず第一に,かき混ぜ文を用いた文理解課題では反応時間や反応正誤に対する語用的な影響が統制しにくいことから,文理解課題に用いる刺激文を,かき混ぜ文から関係節を含む文に変更し,主語関係節と目的語関係節の理解度の相対的な難易度を健常児とSLI児間で比較することとした。かき混ぜ文も関係節を含む文も,語の移動により語が元の位置に痕跡を残す点で統語的には同一であり,この変更によって検査課題の本質的な趣旨を損なわれることはないと考えている。次に,特に年少の幼児を対象とする場合,反応時間に大きなばらつきと系統誤差を伴いやすいことから,検査の従属変数を反応時間から反応の正誤に変更する。その変更に伴い,測定反応を,絵カードに描かれた対象の呼称反応から,文意に適合した複数の絵カードから一枚を選ばせる選択反応とすることにした。当年度はこうした変更方針にもとづき,検査課題のあらたな作成にあたった。主語関係節か目的語関係節か,関係節内の修飾語の有無(文理解の障害が文法知識の障害かワーキングメモリーの障害かを判別するため)の2×2の要因配置にもとづき,異なる動物を主語,目的語に用いた刺激文を,幼児における語の出現頻度,親密度等を統制しながら作成した。また,より多くのデータ収集を可能にするため,研究協力施設(幼稚園,保育園,塾等)の開拓を進めた。なお,研究分担者の関連研究として,小学校高学年生を対象とした発達性読み障害に関する調査研究が発表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究実施計画に沿ったデータ収集は当初の見積もりから大幅な遅れをみている。その理由は,研究実績の概要にも記したとおり,検査課題確立のための予備実験,分析,検討,改変作業に多くの時間をとられたこと,幼児・児童を対象とするデータ収集であることから,研究協力施設(幼稚園等)の開拓に時間がかかったこと(現在4施設),またそれらに伴い,研究遂行のための研究倫理審査申請に際して内容の変更をおこなったことがあげられる。
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今後の研究の推進方策 |
できあがった言語理解課題の刺激文にもとづいて,196セットの検査用絵カードの作成中であり,その完成を待って,本調査に着手する。これとテストバッテリーを組む,他の標準化された知能検査,言語検査,記憶(ワーキングメモリー)検査はすでに準備されている。倫理審査も通過し,すでに承諾の得られた研究協力施設でデータ収集を進める一方で,さらに他の協力施設を開拓する。統計解析に耐えうるデータ収集を年度内に鋭意進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
検査用絵カードの作成に関わる諸経費(消耗品費,イラスト作成のためのアルバイト謝金),検査・実験補助者,検査対象者に対する研究協力謝金ならびに交通費が主たる支出となる見込みである。研究のスピードアップのため,必要に応じて,検査器具,ハード・ソフトウェアの補充が必要となる。また研究報告に要する印刷費,旅費での支出が予定される。
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