研究課題/領域番号 |
23531312
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
本田 恵子 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (50317674)
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キーワード | 特別支援教育 / 発達障害 / 不適応・非行 / 指導・支援 |
研究概要 |
平成24年度は、1)矯正教育用の暴力リスク尺度(Vrics)の項目精査および保護観察における効果測定、2)中学校向けの予防教育用モデルプログラムの実践および効果測定を実施した。1)矯正教育用暴力リスク尺度は、約200名のプログラム実施者の事前事後の変化を比較した結果を元に修正を行った。L(うそ尺度)は信頼性が低いことから3項目を別の1項目に変更、相関の高い質問は、事前事後で有意差の出ている項目を残して31項目を27項目に減らした。ソーシャルスキルに関する質問内容は、抑圧から攻撃へのレベルが明確になるように変更。平成25年度に100名に実施した上で変更後の項目の妥当性を検討する。2)中学生用の予防教育プログラムは、奈良県内の私立中学校および都内の区立中学校の中1から中3までの3学年に対して隔週で6回づつ実施し、効果測定を行った。効果は事前調査で分けた3群(1群:ストレスが高く、ソーシャルスキルを獲得していない群、2群:ストレスは中間でソーシャルスキルは学習したが活用できていない群、3群:ストレスは低くソーシャルスキルも活用できれいつ群)で別れた。3群とも自分ひとりで行えるストレスマネージメント部分についての即効性が見られ、不全では高かった「トラブルが生じたことに怒りを表明する」が減り、ソーシャルスキルとして「やりすごす」が有意に増えた。これは、ストレスマネージメントが日常的に活用されている影響と考えられる。一方で、具体的な問題解決はなされておらず、特に他者との問題場面における認知変容や活用するソーシャルスキルの変化は有意には表れていない。これは、自分が学んだスキルを使っても相手(保護者や暴力をふるっているような自分よりも立場が強い相手)が応じてくれない場合の交渉術が不足していることが考えられた。中学生向けプログラムでは、これらを改善するための場面カードとスキルに加えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、1)暴力リスク尺度の中学生版の作成、2)中学生向け予防教育プログラムの開発、3)予防教育プログラムの実践と効果測定になっており概ね順調に進展している。暴力リスク尺度は青年用が完成し中学生版は2校における実践研究で効果測定に使用した。ただし、中学生版については認知特性の変化やソーシャルスキル項目に修正を加える必要があるため、平成25年度も引き続き項目の修正を行ってから標準化作業に入る。中学生向け予防教育プログラムは、6回、8回、15回のモデルプログラムが完成し、ワークシート、教材も完成した。3)中学生向け予防教育プログラムの効果測定については、ストレスマネージメント部分は有意な結果が得られたが、認知変容とソーシャルスキル活用において十分な時間が作れるような授業案に修正する必要があるため、平成25年度は作成した教材を用いて実践を行い効果測定をする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は最終年度として、1)中学生用暴力リスク尺度の完成、2)予防教育用プログラムの修正と教材の完成、3)窃盗・万引きに対するアンガーマネージメントプログラムの実践と効果測定を行う。2)予防教育用プログラムでは、中間層にターゲットを当てて質的な効果測定ができるような実践計画を立てている。3)窃盗・万引きに対するプログラム開発は、当初計画では、平成25年度は女子少年院向けのプログラム開発としたが、その中でも女子に多い窃盗・万引きにターゲットを絞ることにした。女子特有のホルモンバランスの影響による衝動性や依存性のマネージメントについてのプログラム開発を行うことに変更する。1)2)3)を12月までに終了させ、平成26年1月から3月は、3年間の研究のまとめと報告書の作成を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
B-Aは、190円になっているのは、消耗品購入時に残高予測を誤ったためである。次年度に繰り越せるのであれば、消耗品に加える。
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