平成24年度の研究において、肢体不自由児の学習面及び生活面の困難やニーズに視点をあてたチェック表を試作した。その結果、担当者から、各項目が、「はい」にチェックするか否かの二択になっているため、頻度や程度の要素がある項目などは答えにくいという意見が寄せられた。そこで今年度は、学習支援のアセスメントとして、回答方法を「はい」にチェックする二択から、「ない」「時々」「頻繁に」「常に」の四択で回答することとした。具体的なポジショニング支援にあたっては、BS工房マツダ代表の松田 薫氏に依頼し、福祉機器製作者の立場から、主にキャスパー・アプローチによる座位保持装置の製作及びポジショニング支援についての評価、助言をお願いした。 その結果、ポジショニング支援後、担任によるチェック表を用いた評価においては、①頭部が安定し、対象物に注意を向けやすくなった、②肩の力が抜け、ヘッドレストに頭を預けることはできるようになった、③頭部の位置が安定し、目と手の協応動作がスムーズになった、④上下へのロッキングの動きを、車椅子の振り子様の動きによって逃がすことができるようになった、⑤上肢を挙上する動作、例えばボールを持ち上げる動作ができるようになったなど、学習面で有効な支援が得られた。しかし、①上肢の動きに制限が見られる、②ヘッドレストがあると、頚部の後屈が難しくなり、コップの水分量が少なくなった際に飲みづらくなる、などの課題も指摘された。肢体不自由があり、学習上及び生活上の困難のある子どもが、環境から情報を受け取りやすくなるためには、姿勢定位のシステムを整えることが大切であり、知覚しやすい情報を得られた子どもは、適応的な行動の変容が起こっていくという、ポジティブな「知覚行為循環」が達成されることが示唆された。 研究成果は研究成果報告書として冊子にまとめ、肢体不自由特別支援学校及び研究協力者に送付した。
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