研究課題/領域番号 |
23531317
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
松村 暢隆 関西大学, 文学部, 教授 (70157353)
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研究分担者 |
小倉 正義 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 講師 (50508520)
竹澤 大史 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所, 教育福祉学部, 研究員 (80393130)
緩利 誠 浜松学院大学, 現代コミュニケーション学部, 講師 (80509406)
石川 裕之 畿央大学, 教育学部, 助教 (30512016)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 発達障害 / 学習困難 / 才能 / 認知的個性 / 2E児・者 / 特別支援 |
研究概要 |
認知的個性という包括的概念の下、発達障害や学習困難と才能(得意、取り柄)に関する認識、アセスメント、特別支援に関して、多方面の視点から基礎・予備的調査、資料収集を行った。1.中学校で異学年合同の総合学習に、生徒の認知的個性を把握して活かす方策を探った。生徒の認知的個性としてMI(多重知能)を、生徒自身の選択によるクラスター(小集団)形成に有効に活かせることが分かった。2.発達障害(とくに2E)児・者の認知特性に関わる文献・資料収集および、認知的個性に配慮したソーシャルスキルトレーニングの実践を行った。並行して、大学附属病院等のWISC-IIIの検査データの整理を進めた。3.発達障害やその傾向のある幼児を担当する保育士・幼稚園教諭を対象とした研修プログラムの開発に取り組む中で、担当児の発達プロフィールを把握し、取り柄を伸ばすための支援に活かせるよう、保育士自身が質問紙やチェックリストを用いてアセスメントを実施する機会を設定した。また、行動観察を通して保育士が担当児の得意な行動を見極め、実践において積極的に褒めると共に、他児からの称賛が得られるような工夫も取り入れた。4.学校教育と強い接点をもちながら開発されてきた知能検査の歴史的変遷を、検査結果が選別と差別のために利用されてきたという批判に心理学がどう応えて改善を試みてきたかという視点から、明らかにした。また、近年開発された知能検査(WISC-III/IV、K-ABC、DN-CAS等)が「賢いアセスメント」哲学に基づきながら学校教育とどのように新たな接点を築こうとしているのか、個別化・個性化教育での利用を見通して、その方法論を考察した。5.韓国の才能教育について、韓国の大学図書館等で基礎的な資料を収集した。また、才能教育と民族主義教育が融合したユニークな教育を行っている民族史観高校を訪問し、調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、3年計画の研究の、準備段階として、基礎資料を収集して、今後調査を実施する基盤を形成するのが目的であった。その観点からは、目的は概ね順調に達成されてきたと言えよう。具体的な研究の点では、外国・国内の出張調査や研究者間の検討会が当初の予定通り実施できなかった面もあるが、代替の基礎的調査により、次年度の研究に順調に繋げられるものと判断される。
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今後の研究の推進方策 |
今後、とくに2年目の次年度は、認知的個性に関する今年度の基礎・予備的調査、資料収集に基づいて、具体的な調査研究をより詳細に展開させる。1.中学校の総合学習で生徒の認知的個性を活かす実践をさらに進める。認知的個性としてMIに加えて、同時処理・継次処理という認知処理様式を把握することの有効性を探究する。2.引き続き、2E児・者の認知特性について、文献・資料・情報収集と共に、大学附属病院等での検査データの収集を行い、整理していく。また、自閉症児・者の認知的個性を活かしたソーシャルスキルトレーニングや心理教育プログラムを実施し、効果の検証を行う。その際、苦手な部分だけでなく、得意を活かし伸ばすプログラムになることを目指す。3.保育所・幼稚園に在籍する発達障害やその傾向のある幼児を担当する保育士・教諭が、担当児の発達プロフィールを把握し、彼らの取り柄や得意なものを見極めることができるようなアセスメントの方法を検討する。4.個別化・個性化教育の代表校的存在の小学校における個別化・個性化教育カリキュラムの開発経緯とその方法を明らかにする。すなわち、関連文献等で予備的検討を行い、創生期の指導者的実践家へのインタビュー調査を実施し、また当該の小学校でフィールド調査を開始する。5.引き続き関連資料の収集を進めると共に、韓国における発達障害や学習困難をもつ子どもを対象とした才能教育の状況について詳しく探るために、国内や韓国の専門家を訪ね、聞き取り調査を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
・国内旅費、外国旅費について、国内外の資料収集や学会参加、フィールド調査、ソーシャルスキルトレーニングの実施等のために、国内・外国旅費が必要である。また、3年計画の本研究の中間報告と今後の計画を検討するため、研究者が集まり検討会を実施するため、国内旅費を使用する。・設備備品費、消耗品費について、行動観察用の機器や関連度書、フィールド調査、データ整理等に必要な消耗品等を購入する。・謝金等については、データ整理やプログラムの実施のための研究補助者に対して必要となる。・なお、次年度への繰越金は、研究分担者によって使用される。一つは、今年度末間際に外国調査を実施する必要が生じ、今年度中の事務処理が困難になったため、次年度の外国調査に充てられる。また一つは、教諭等の担当児の行動観察の手順を状況に応じて柔軟に進める上で、今年度中の観察機器購入が困難になったため、次年度の観察機器購入に充てられる。
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