研究課題/領域番号 |
23531318
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研究機関 | 藍野大学 |
研究代表者 |
若宮 英司 藍野大学, 医療保健学部, 教授 (20426654)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 学習障害 / 計算障害 / ゲルストマン症候群 |
研究概要 |
1.数の量的把握検査の開発; 集団筆記式のテストを試作、小学校の通常学級に通う児童を対象として施行し、正答率の学年別平均値、標準偏差を求めた。結果を第108回日本小児精神神経学会に発表予定である。感受性、妥当性の検討のため、計算障害の子どもを対象としてデータを集積中である。2.手指認知、左右認知調査; 手指認知、左右認知に関するオリジナル判検査を、小学校の通常学級に通う児童を対象として施行、正答率の学年別平均値、標準偏差を求めた。結果をまとめて第107回日本小児精神神経学会で発表予定である。予定していたRey’s Auditory-Verbal Learning Testの正常値採取は、授業時間を多く割くことになるので断念した。3.脳に器質的障害がなくWISCIIIのFIQが85以上で、文字の読み書き困難、または計算困難を主訴に来所する小学生を対象として、読字障害、書字障害、計算障害、手指認知障害、左右混乱を検討し、学習技能障害の子どもの中の発達性ゲルストマン症候群のおおよその頻度を調べた。第115回日本小児科学会学術集会にて発表した。4.計算に要する認知分析の手始めとして、小学生の計算における数的事実と計算手続き、それぞれの速度、正確性の各要素の関係性を共分散構造分析を用いて検討した。結果をまとめて第54回日本小児神経学会で発表する予定である。それぞれの発表内容は順次論文としていく予定である。23年度の実績は、計算障害の認知基盤を解明するための検査、計算障害に合併しやすいと考えられている認知機能障害の判定基準を整備したことである。今後の研究の土台をとなる。また併存頻度の検討により、計算障害と読み書き障害が高頻度に合併することが明らかになり、発達性ゲルストマン症候群の枠にとらわれることなく、各障害要素の併存に留意して診断する必要性が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度の研究予定は、数の量的把握の検査法を新規に開発すること、左右認知、手指認知、AVLTの基準値を調査することであった。数概念の検査は集団筆記式の検査を試作し、小学校通常級に通う児童のデータを採取、学年別平均値、標準偏差を求めた。計算障害の子どものデータは順次採取中で、20名以上に検査を施行した。手指認知、左右認知の小学生正常値も採取し、学年別平均値、標準偏差を出すことができた。AVLTに関してはデータ採取のために授業時間を多く割くことになるので断念した。従って、AVLTを除いては23年度の当初研究予定は順調に進行している。さらに上記の手指認知、左右認知検査の基準値も利用し、計算障害、手指認知障害、左右混乱の併存状況と読字障害、書字障害の合併率を求め、学習障害の中のゲルストマン症候群の大まかな頻度や、発達性ディスレクシアに計算障害が比較的高頻度に合併することを示した。また共分散構造分析を用いて、数的事実と計算手続きの発達段階におけるの関係性を検討することができた。これらは24年度以降に予定していたもので、部分的には計画より速く進行している。したがって、全体としてはおおむね順調に進展しているものと認識している。
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今後の研究の推進方策 |
1.数の量的把握検査、手指認知検査、左右認知検査は、引き続き学習障害の子どものデータを採取する。充分な例数が集積できれば、検査の感受性、特異性の検討を行い、その上で発達性ゲルストマン症候群の頻度を再検討する。学区間較差の影響を排除し、標本数を増やして信頼性を上げるために、できれば、正常対照のデータを別の学校で採取したいと考えている。2.計算障害の基盤障害認知の検討を行う。数の量的把握能力や数的事実の自動化、形態認知、音韻認識、Rapid Automatized Naming、数唱など複数の認知機能との関連性の検討をする。計算の構成領域の障害領域により計算障害の下位分類を設定し、比較検討する予定であったが、数の入出力領域に障害は頻度が少ないのか、実際の対象児にはいない。また、23年度に行なった数的事実と計算手続きの発達関連性の検討の結果、両者に関連性が認められたため、計算障害の下位分類を仮定した比較検討は適切ではないかもしれない。各認知と計算技能の相関など関連性の検討を行う方向に修正する。また、23年度の検討より、発達性読み書き障害との合併が多いことも明らかになったため、両者の共通基盤の認知障害について探索したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
第115回日本小児科学会学術集会(4月、福岡)、第54回日本小児神経学会大会(5月、札幌)、日本小児精神神経学会大会(第108回;6月、東京、第109回;11月、神戸)、日本LD学会第21回大会(10月、仙台)の参加費、宿泊費、交通費のため250,000円を予定。データ採取、入力、統計処理のために必要な人員に対する謝金として、230,000円を予定している。さらに、検査台紙、電池、CDなどの消耗費に20,000円をあてる予定である。
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