研究課題/領域番号 |
23531318
|
研究機関 | 藍野大学 |
研究代表者 |
若宮 英司 藍野大学, 医療保健学部, 教授 (20426654)
|
キーワード | 学習障害 / 計算障害 / ゲルストマン症候群 |
研究概要 |
1.数の量的把握能力検査の開発;集団筆記式の検査を試作し、小学校の通常学級に通う児童を対象として施行し、正答率の学園平均知推移と標準偏差を求めた。結果を第108回日本小児精神神経学会で発表した。24年度は対象者の数を増やしたので、論文とし投稿準備中である。 2.手指認知、左右認知調査;手指認知、左右認知に関する検査を、小学校の通常学級に通う児童を対象として施行し、正答率の学園平均知推移と標準偏差を求めた。結果を第107回日本小児精神神経学会で発表した。24年度は対象者の数を増やしたので、論文とし投稿準備中である。 3.文字の読み書き困難と計算困難を訴える器質的脳障害のないFIQ85以上の小学生を対象に、読字、書字、計算、および上記の手指認知、左右認知の検査を行った。結果を第115回日本小児科学会で発表した。発達性ゲルストマン症候群の疾患アイデンティティを示唆しない結果が出たので、読み書き障害における計算能力、手指、左右認知の状態としてまとめなおし、論文にまとめる予定である。 4.計算技能の認知的構造の検討のため、数的事実、計算手続きの速さと正確さの要素関連性を共分散構造分析を用いて明らかにした。第54回日本小児神経学会で発表した。乗除算の分析にはより多くの症例数が必要である。 5.数の量的把握能力が計算技能に及ぼす影響を検討するため、数的事実、計算手続きの速さと正確さの各要素と数の量的把握検査成績の相関を求めた。第55回日本小児神経学会で発表予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度は、23年度と別の地域の小学校の協力を得て、学習上の問題のない小学生の正常対照データを積み増し、数の量的把握検査と左右・手指認知検査の正常値の確実さを増すことができた。 23年度に行った左右・手指認知検査、数の量的把握検査の対照データのまとめ、学会報告を行い、その後24年度に加えた対照データとともに論文にまとめ投稿準備をした。読み書き障害や左右・手指認知と計算障害の合併、計算技能の認知構造分析について学会報告をした。この二つについては、引き続き計算障害の子どものデータを収集中であり、十分な例数が集まれば論文にまとめる予定である。 また、読み書きや計算など学習に困難を訴える子どもに対して、計算検査(特異的発達障害 診断と治療のためのガイドライン)と数の量的把握検査を行い、計算の計算手続きの速さと正確さの各要素との相関を求めた。数の量的把握能力は、主に計算の速さに対して関連が強いことが示唆された。 24年度は、左右・手指認知検査と数の量的把握検査の対照データを積み増すこと、計算障害の子どものデータを集めて、計算の認知特性を明らかにすることが目標であるため、ほぼ順調に進展しているものと認識している。
|
今後の研究の推進方策 |
対照データは、小学校に出向いて一度に採取することになるが、計算障害の子どものデータは、臨床場面でコツコツと収集するほかない。引き続き、計算障害の子どもの読み書き能力、計算能力と左右・手指認知のデータを集める。十分な例数が得て、再度分析し、読字、書字、左右認知、手指認知障害との関連性、計算技能の認知的要素の関連性に関して検討する。 本年度が最終年度になるため、今までの結果を論文として投稿する。 水頭症や未熟児など、器質的脳障害の子どもの計算能力についての検討は見当たらない。少数例の器質的脳障害の症例に、読字、書字、計算、および関連認知能力の検査を行い検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
日本小児神経学会(第55回;5月、大分)、日本小児精神神経学会(第111回;名古屋)の参加費、宿泊費、交通費のために120,000円を、論文投稿のための費用として、150,000円を、データ採取、入力、統計処理のために必要な人員に対する謝金として210,000円、さらに、検査台紙、電池、CDなど消耗費に20,000円をあてる予定である。
|