研究課題/領域番号 |
23531322
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研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
林 恵津子 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (00413013)
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研究分担者 |
田中 裕 川村学園女子大学, 文学部, 教授 (40255196)
松本 秀彦 高知大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (70348093) [辞退]
宮地 弘一郎 信州大学, 教育学部, 講師 (40350813)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | 重症心身障害児 / 瞬き / 国際情報交換(米国) |
研究実績の概要 |
26年度は、(1)瞬きの自動検出システムおよび分析ソフトの精度向上、(2)複数場面での瞬き記録を同一対象者内で比較することで、場面の違いによる反応の比較検討、(3)瞬きの出現と頭部の動きとの関連の検討、(4)瞬き記録分析のまとめとして大学紀要での発表を計画した。 (1)瞬きの自動検出システムおよび分析ソフトは、工学部の画像処理専門研究者の連携を得て行っている。健常者での画像処理はほぼ問題なく行えるようになったが、重症心身障害児の特徴である、持続時間の長い瞬きを検出することが難しい、完全に閉じない瞬きを瞬きとして検出しない、などの問題が明らかになった。これらは、重症心身障害児の瞬きとしてよく見られるものであるが、「何をもって瞬きと同定するか」という定義に戻って検討が必要な課題となった。 (2)複数場面での瞬き記録を同一対象者内で比較検討することは、今年度は注意の持続に注目して分析を行った。瞬きの出現を時間経過で示すと、場面によって、与えられた刺激によって注意の持続の有り様が変化することが分かった。瞬きの結果整理の方法として、時間経過での提示が有効であることが分かった。 (3)瞬きの出現と頭部の動きとの関連は、瞬きの出現の役割に迫る検討である。健常者では、頭部の動きと瞬きの出現が一致することが多い。これは、頭部の動きにより視覚情報が遮られるときに瞬きをするという効率的な連動である。しかし、視覚障害のある重症心身障害者で頭部の動きと瞬きの関連を検討したところ、健常者とは異なることが分かった。視覚情報の利用ができない人では、瞬きの意味も異なることが分かった。 (4)重症心身障害児における注意の持続を瞬きを用いて評価する、また、重症心身障害者で視覚障害者のある人について、瞬きと頭部運動との関連を論文としてまとめ、紀要に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調と評価している。瞬きの自動検出システムおよび分析ソフトは、ひとつ課題が達成できると新たな課題が明らかになる。重症心身障害児・者の瞬きの特異性を改めて考えている。 しかし、瞬き画像記録をコマ送りで再生し、瞬きの出現と終了を同定する従来の分析方法で、これまでの画像記録の分析も進めている。表出行動からは判断が難しい重症心身障害児・者の注意の持続、視覚刺激の取入れなど、これまで瞬きの研究分野では取り扱ってこなかった事象について分析と検討が進んでいる。本年度は2本の紀要を執筆することができた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)療育指導スタッフとの情報交換 療育指導スタッフとの情報交換会を開催する。療育スタッフから重症心身障害児病棟患者の日々の関わりの中で得られる印象や、療育指導参加時の反応、好みの活動などについて聞き取る。また、瞬き記録の分析から得られた所見を療育スタッフに伝える。日常の印象と瞬き記録による評価に、一致があるかどうかを検討する。また、瞬き記録の有効性を協議の中から探る。 (2)論文の執筆 瞬き記録から得られた情報を、個別の支援計画に活かすことを主眼とした論文を執筆する。27年度は最終年度にあたるので、これまでの画像記録の蓄積を活かし、重症心身障害児・者の生活の質を高める療育のあり方を探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
瞬き画像の自動分析を進める中で、どのような分析ソフトを利用するか検討を進めてきた。画像処理の効率性を高めるためのパーソナルコンピュータの購入を検討していたが、新しい機種の発売が27年度になることが分かったため26年度中の購入を控えた。
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次年度使用額の使用計画 |
画像分析処理に耐えうる性能を持ち、なおかつ、病棟への持ち運びが可能なコンパクトなパーソナルコンピュータの購入に充てる。
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