研究課題の主題である立方重偶符号とは二元体上の数ベクトル空間の部分空間で各元のハミング重みが8の倍数となるものである。特に長さが16の倍位数のものが興味深い性質を有している。また、符号の解明には極大なものの分類や特徴付けが本質的である。本研究代表者および研究協力者の先行研究において長さ48までの分類が得られている。そこから、それまでの規則性に反する極大立方重偶符号が存在することが判明している。その極大立方重偶符号は、三角グラフと呼ばれる古典的なグラフの隣接行列から生成される符号を拡張したものであり、その次元は他の極大立方重偶符号と比較して規則性から外れた性質を有している。 本研究課題を開始するにあたって、次に挙げる点について十分な知見が得られていなかった。1.極大立方重偶符号に関する次元の規則性。2.自己双対符号の貼り合せ、もしくは、三角グラフに由来しない極大立方重偶符号の存在非存在。3.三次形式と立方重偶符号との関係性。 そこで、本研究課題の目標を次のように設定した。1.については、次元に関する定性的な特徴を明らかにする。2.については、有力な組合せ構造との関連で極大立方重偶符号の探索を行う。3.における三次形式の基本的な性質を明らかにする。 研究期間の最終年度時点での状況は次の通りである。1.については一般的な規則性についての知見を得られていない。2.については、関連する符号とある種のゲーム構造における純粋ナッシュ均衡の構造との関連が得られた。3.について、ある種の特殊な状況のもとでの部分的な知見を得ることができた。
|