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2012 年度 実施状況報告書

量子パンルヴェ系の表現論的研究

研究課題

研究課題/領域番号 23540003
研究機関東北大学

研究代表者

黒木 玄  東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10234593)

キーワード量子群 / カッツ・ムーディ代数 / パンルヴェ方程式 / ワイル群双有理作用 / τ函数
研究概要

2011年度に対称化可能GCMに付随するワイル群双有理作用で生成されるτ函数についてその量子化の方法を発見した。すなわち、パンルヴェ方程式およびその一般化において重要な役割を果たしているτ函数のある広いクラスの量子化に初めて成功した。τ函数の基本的な性質は正則性である。ワイル群双有理作用で生成されるτ函数は多項式になるという強い正則性を持っている(野海・山田の結果)。同じ結果が量子化された場合(より正確に言えば正準量子化かつq差分化された場合)にも成立していることを示すことにもすでに成功している。2012年3月の学会でその結果について講演した。2012年6月にはワイル群で生成される量子τ函数の多項式性の証明を書き上げ、プレプリントとして発表した。
ソリトンの佐藤理論によればτ函数は行列式で表わされる。行列式はその成分の多項式である。ワイル群で生成される(古典)τ函数の多項式性は本質的にそのような筋道で証明される。ところが一般に非可換行列式は成分の非可換有理函数になるので、量子化された場合のτ函数の多項式性を同様の方法で証明することは困難である。しかし実は表現論における translation functor の理論から量子化された場合のτ函数の多項式性を導くことができる。τ函数と表現論のこのような関係についても今まで誰も気付いていなかったものと思われる。
2012年9月の学会ではA型の場合の量子化されたワイル群双有理作用のSato-Wilson表示について講演した。その結果からA型の場合に量子τ函数が非可換行列式で表わされることが導かれる。2013年3月の学会では、mとnが互いに素な2以上の整数であるとき、ある種の複雑なq交換関係で定義されるmn個の元から生成される斜体にA型の拡大アフィンワイル群の直積が自然に作用することを発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

この研究の大きな目標は量子パンルヴェ系および量子モノドロミー保存系の理論を発展させることである。量子化される前の古典の場合にはτ函数の概念が重要な役割を果たしている。しかし、研究計画を立てた時点では、正直な話、原理的に不可能なのではないかと感じるくらい、τ函数の量子化には困難を覚えていた。τ函数の概念抜きに、Lax表示のレベルでの量子化で満足せざるをえないのではないかと実は思っていた。
しかし、思いがけず、任意の対称化可能GCMに付随するワイル群の双有理作用で生成されるτ函数の場合には(しかしそれだけでも相当に広い)、その量子化の正しい処方箋を見付けることができた。それが正しい処方箋であると断言できる理由はその処方箋で構成された量子τ函数が非可換多項式になるという強い正則性を持つことを示せたからである。しかも、その証明法は量子化される前の方法(本質的にソリトンの佐藤理論)とは完全に異なり、証明には表現論における translation functor の理論を本質的に使う。
以上のように研究計画を立てたときには思いもよらなかった理論の発展が得られているので、「当初の計画以上に進展している」とみなしてよいだろう。

今後の研究の推進方策

任意の対称化可能GCMに付随するワイル群で生成されたτ函数の量子化とその多項式性の証明という予想外の成果が得られたので、その方向でさらに理論を発展させたい。特に「translation functor によって Verma 加群が Verma 加群にうつされる」というタイプの表現論における結果からワイル群双有理作用で生成される量子τ函数の多項式性がただちに導かれるという事実の裏には何が隠れているかを追求したい。
他にも理論の基礎付けが不完全なところがたくさんある。たとえばパンルヴェ系や可積分系の理論ではLax表示(古典L作用素が主役)やSato-Wilson表示(τ函数が自然に現われる)が重要な役目を果たしているのだが、量子化された場合のそれらに関する理論は十分に展開されておらず、謎がたくさん残っている。たとえば量子化されたワイル群双有理作用のLax表示のL作用素は量子群を用いた内在的な記述を持つと期待されるのだが、現時点ではそのようなことはまだわかっていない。Sato-Wilson表示についても同様である。しかし、A型の場合には試行錯誤でうまい処方箋を見付けているので、その方向での理論も発展させたい。

次年度の研究費の使用計画

次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2013 2012

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] 互いに素なm,nに対するA_m型とA_n型の拡大アフィンWeyl群の直積の双有理作用の量子化2013

    • 著者名/発表者名
      黒木玄
    • 学会等名
      日本数学会
    • 発表場所
      京都大学
    • 年月日
      20130322-20130322
  • [学会発表] 量子Weyl群双有理作用のSato-Wilson表示2012

    • 著者名/発表者名
      黒木玄
    • 学会等名
      日本数学会
    • 発表場所
      九州大学伊都キャンパス
    • 年月日
      20120918-20120918

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公開日: 2014-07-24  

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