研究課題/領域番号 |
23540008
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
寺田 至 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 准教授 (70180081)
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研究分担者 |
岡田 聡一 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (20224016)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | リトルウッド・リチャードソン盤 / ヤング図形 / 組合せ論 / 全単射 / ロビンソン・シェンステッド対応 / 旗多様体 / 国際研究者交流 / イギリス:ポルトガル |
研究概要 |
形がλ/μで重みがνのLittlewood-Richardson盤と、形がλ/νで重みがμのLittlewood-Richardson盤の間の、O. Azenhasによって構成された全単射に対し、AzenhasおよびR. King、M. van Leeuwenと協同しながら研究を進めた。特に、Azenhasの全単射の対合性に関し、以前から得ていた、代数多様体の既約成分の間の対応を用いる証明に加え、純粋に組合せ論的な証明を、Azenhasが過去のプレプリントで実施している論法に途中まで沿い、以後別の考察を用いることにより行った。Azenhasの論法の最後の部分にも、さらなる考察を加えつつある。これらについても何らかの形で発表することを検討している。また、その全単射がtableau switchingを用いた全単射と一致することの証明においても新しい知見が得られ、Azenhasとの共同研究の形にまとめられる見通しとなった。これらの成果は、必ずしも明瞭でなかった点を明確にすることにより、多くの人にはっきり受け止められるとは言いがたかったAzenhasの結果を確固たるものにし、Littlewood-Richardson盤に関する知見を広げる意義があるほか、AzenhasとKingが現在進めている、別の構成・観点からの証明、およびLittlewood-Richadson盤以外への一般化にもヒントを与えることが期待されている。また、この全単射の幾何的な意味づけについて、関連した研究を行っているvan Leeuwenと討議・検討を行い、関連する問題や、関連する他の研究者の研究について情報交換を行った。これは現在投稿準備中の論文から進んで、新たな研究課題をもたらすことが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していてまだ遅れている仕事もあるが、研究の進展に応じ、当初想定していなかったが、当初の計画に密接に関連する成果が得られたものもある。Azenhasの全単射の、代数多様体の既約成分を用いた幾何的な意味づけの論文の投稿について、当初の計画では第一にするとしているが、この報告書作成の時点でまだ投稿に至っていない。これは、先行研究との関係を明確に記述する作業の過程で、先行研究としてあげるべき内容の中に、さらなる明確化を行う必要がある部分があると判断したためであり、そこから、計画に記述されていないが、計画に深く関連した成果が生まれつつある。これは、幾何的な意味づけに関する結果の当否に影響を与えるものではなく、それに触れずに当初の論文を先に投稿することとも技術的には不可能とはいえないが、Azenhasの全単射に関する研究の流れをしっかりしたものにするためには、是非行わなくてはならない研究だと考えている。全体としては、平成23年度の研究は、これまでにないほど活発に進んでいる。これまでのいろいろな方の励ましによるものであることはもちろんだが、ここにきて特に活発になったのは、Azenhasが、この研究において考察するのに最適な興味深い問題を偶然示したこと、また、きっかけは別の問題ではあったが、Kingとの交流の機会があったことが大きい。
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今後の研究の推進方策 |
Azenhasの全単射に関連する研究を進め、まずtableau switchingとの一致をAzenhasの共同研究としてまとめる。さらに、Azenhasによる対合性の証明の最後の部分の考察を進める。それらを踏まえたうえで、幾何的な意味づけの論文の投稿を行う。さらに、この過程で明らかになった問題、すなわちKingらの観点による対合性の証明との関連や、van Leeuwenとの討議で明らかになった、発展的な問題や他の研究者の研究との関連を整理し、貢献できる貢献を行い、今後どのように課題に加えるか検討する。その上で、次年度後半には、Applebyの構成などをもとに「転置」を伴わないLittlewood-Richardson盤を幾何的な意味で対応させる方法を考える問題にチャレンジしたい。また、研究計画中で述べた、ある種の対称性・歪対称性を課したべき零行列の集合の中で支配的なJordan標準形に関する結果に関連して、昨年度修士課程を修了した加藤真也氏が、組合せ論的な観点から新たな結果を示した。これとの関連も考えながら、既存の部分に関しては次年度中に投稿を行い、ルート系を用いた記述、それを用いた類似の問題への応用に進みたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の夏には名古屋大学において、この種の組合せ論関係の大きな国際集会であるFPSAC '12が行われる予定であり、当研究の分担者の岡田聡一氏への配分を含め、この機会を利用して、関連する研究者との活発な交流を進めたい。平成23年度に予算の使用が少し控えめになったのは、この研究集会の予算状況にまだ不明な点があって、本研究課題はこの集会そのもののための予算ではないものの、この集会には、本研究課題やその周辺分野と関連の深い世界の研究者が集中して訪れると予想されるので、この集会の機会に本研究課題の進展を図るため、適切な場合には必要な協力をする可能性を考慮していたからである。次年度は、この集会および関連する集会を含めた海外からの研究者の招聘、関連する国内の研究者を集めること、当方から海外の研究者を訪問することもあわせて、研究を円滑に進めるのに適切なように交流を行う予定である。また、研究の進展に応じた資料の整備も行う予定である。
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