研究課題/領域番号 |
23540011
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
宮本 泉 山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (60126654)
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キーワード | アソシエーションスキーム / 置換群 / 数式処理 / 組合せデザイン / スーパースキーム |
研究概要 |
可移な群に1点を付加えて可移拡大を構成する組合せ論的な方法において、群として可移拡大は得られないが、可移拡大群がもつべき組合せ論的性質を満たす対象が得られる場合について、様々な計算実験を行った。GAPシステムのライブラリにある次数が2499次までの原始的な群のデータのうちで、計算上の制約からもとの可移群の1点固定群のorbitの個数が60程度以下の群に対して探索を行った。その結果、拡大群にならない225個のスーパースキームが得られたが、そのうちで、より可移拡大群に近い性質を満たすものは、わずか9個であり、さらに、それらの次数も100以下という小さいものであった。理由としては、次数が大きい場合では、1点固定群のotritの個数が60程度以下という計算アルゴリズム上の制約条件が強すぎると考えている。現在のアルゴリズムでは、このorbit数が組合せの個数による計算量の爆発の原因となっている。 また、可移拡大群が得られた場合は、tが2以上の組合せt-デザインが得られることの類似を、得られた225個の拡大群にならないスーパースキームに対して求める計算実験を行い、いくつかの場合にデザインを得た。デザインの探索に際して、それが構成できる場合と組合せ論的可移拡大を考える元になっているアソシエーションスキームとの関係を調べることを試みたが、関係を得るためには構成できる場合の個数が少ないようであった。 研究計画に記述したように、アソシエーションスキームから可移な置換群を計算する、基本的なアルゴリズムの計算実験を続けている。その結果、新しく33次、34次の場合の計算を行った。GAPシステムにこの計算に必要な関数は用意されているが、実際に計算を行うと、30次以下でも、メモリ容量オーバーが生じることがあり、32次の分類の再検証も含めて、アルゴリズムの改良を続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述の組合せ論的可移拡大において、計算実験をもとに、例えば、系列としての組合せ論的拡大を構成する理論を得ることを期待していたが、まだできていない。次数が大きい場合では、1点固定群のotritの個数が60程度以下という計算アルゴリズム上の制約条件が強すぎると考えているので、計算アルゴリズムでの改良を試みたが、十分な結果が得られなかった。現在のアルゴリズムで、計算機の高性能化に期待して実験を行ったが、得られた新結果は少なかった。 この拡大と関連した組合せデザインの研究においても、系列の構成などの理論的な結果を期待したが、同じ理由で、そのような結果は得られていない。それから、本研究の根本をなっているアソシエーションスキームとデザインの構成との関係を考察したが、むしろ、関係が無いような実験結果となっていた。 以上のように、計算実験を進めてきたが、新しい知見に至っているとは言い難い。そこで、研究計画にあるように、アソシエーションスキームから可移な置換群を計算する、基本的なアルゴリズムの計算実験を続けている状態となっている。新しく33次、34次の場合の計算を行うことができたが、プログラムの検証ための30次以下の場合を計算に、予測より時間がかかって、まだ、できていない。その主要原因がメモリの容量不足であるので、結果の再検証が重要と考えている32次の場合については、一層の困難が予想される。なぜならば、32次のアソシエーションスキームで群から構成されるのは、4000個余りで、数十個を除くアソシエーションスキームから構成できている群は30万個余りなので、残りの数十個から32次の可移な群の残りの250万個ほどの構成を必要とするからである。
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今後の研究の推進方策 |
基本的な計算実験と考えているアソシエーションスキームの分類から可移な置換群を分類するは、基本的に必要となる関数はGAPシステムに用意されているので、比較的短期間で網羅的な計算結果を得られるであろうと予想していたが、実際に、関数を組合わせて使用すると、プログラムのバグも含めて様々な困難が存在している。時間はかかっているが、地道な工夫を積重ねて、少しずつ進展してきたので、継続してプログラムの改良を行う。 25年度は研究の最終年度であるので、研究集会においても成果の発表を目指すべきであるが、研究がやや遅れている状況なので、当面、研究集会において情報収集をすることに重点をおいて、積極的に参加することを考えている。具体的には、6月にボストンで開かれるISSAC研究集会への参加を予定している。ISSAC研究集会は、本研究の着想を得るきっかけにもなった研究集会である。また、9月にはベルリンで開催されるCASC研究集会などを考慮している。来年2月には、韓国で代数的組合せ論の研究集会が開かれる予定であるので、その時には成果を発表することを目指している。 計算実験において、高速コンピュータとして、24年度から京都大学のスーパーコピュータシステムを使用している。しかし、実験の結果、手許にあるさほど高性能ではないノートパソコンの5倍程度の速さしか得られないようである。しかも、大量のメモリをし使用するためのバッチジョブは優先度が低い上に、最近、混んでいるときも多い。それに対処するために、年度末に、比較的廉価であるがそれなりに高性能なプロセッサをもつパソコンを購入した。結果、計算速度では京大のシステムと比較して遜色無いようである。ただし、メモリ容量については、大型計算機に頼らざるを得ない。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究の申請書にも記述したように、本研究に関連する研究結果は、国際研究集会において発表されることが多い。上の今後の推進方策に記述したように、ボストンでにISSAC研究集会を始めとして、CSAC研究集会、韓国での代数的組合せ論研究集会などに参加する計画である。そのために、情報収集のための旅費を、最初の研究計画書にある使用予定金額より多くとる計画である。それに伴って、国際会議参加費も増加することになる。具体的には、費目別収支状況等「次年度使用額(B-A)」は、当初の予定に、海外での研究集会への出席を1回追加することに使用を予定している。
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