研究課題/領域番号 |
23540012
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中西 知樹 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 准教授 (80227842)
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キーワード | 団代数 / 完全WKB解析 / 曲面の三角分割 |
研究概要 |
2013年度は引き続き団代数の基礎と応用の研究をおこなった。特に、岩木耕平氏(京大)との共同研究で、完全WKB解析における変異理論の研究を開始し、以下の成果を得た。Riemann球面上のSchroedinger方程式のポテンシャル関数の連続変形に対して、Stokesグラフが不連続に変形すること(変異)、また同時にVorosシンボルが漸近展開の不連続現象であるところのStokes現象を起こすことは、従来より良く知られていた。 本研究では、このような完全WKB解析における変異現象と、最近のGaiotto-Neitzke-Mooreによる4次元ゲージ理論およびHitchin系の研究, Bridgeland-Smithによる3-Calabi-Yau圏の安定性条件の研究などの進展を踏まえて、より一般にコンパクトRiemann面上におけるSchroedinger方程式の変異理論の研究を開始した。その結果、Gekhtman-Shapiro-Vainshtein、Fock-Goncharov、Fomin-Shapiro-Thurstonらによる、Riemann面上の三角分割と団代数の関係性を有効に用いることにより、StokesグラフやVorosシンボルの変異が団代数の変異とその一般化により記述されることを明らかにした。これは団代数と完全WKB解析というかなり疎遠と考えられていた二つの分野の密接な結びつきを明らかにするものであり、大きな意義があるものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
団代数の応用は多岐に渡るが、解析学における顕著な応用はダイログ関数以外にはあまり見当たらなかった。 今年度、解析学の一分野である完全WKB解析における団代数の応用を見いだしたことは、ある意味で想定を超えたものである、研究計画全体における主要な結果と位置づけられる。
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今後の研究の推進方策 |
団代数を用いた完全WKB解析の変異理論はまだ始まったばかりであり、その背景の解明に向けてさらなる研究を進める。また、これに関連して、団代数の基礎理論の拡張も目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
2014年度前半期において3回の海外研究集会(モントリオール、モスクワ、ハンブルグ)における講演が予定され、後半期にもその他の海外研究集会が予想されるため、2013年度後半に予定していた海外研究者招聘などを手控え、2014年に繰り越した。 2014年度前半期における3回の海外研究集会(モントリオール、モスクワ、ハンブルグ)および、後半期のその他の海外研究集会に参加する予定である。
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