研究概要 |
本研究の目的の一つは各種グラフの系列から定まるラプラシアンの核空間の次元の数論的振舞を解明し数論的解釈を与えることである。研究代表者は平成23~24年度にかけてデカルト積C_m x C_n(C_n はn頂点サイクルグラフ)の場合に核空間の次元を第2種チェビシェフ多項式で表す公式を予想した(論文発表は平成24年度)。今年度はこの公式の証明に成功した。その帰結として核空間の次元の数論的振舞(具体的には、m,nを動かしたときの核空間の次元の間の関係式)について以前得た結果の別証明を得、また新しい関係式も得ることができた。これらは次年度の論文発表、口頭発表に向けて現在準備中である。次元の系列を何らかのゼータ関数と結びつけることも一つの目標であるが、それに一歩近づいたといえる。もう一つの目的であるラマヌジャングラフの研究については相変わらず基礎的考察にとどまった。 本研究で培った知見の他分野への応用として二つの成果を得た。研究代表者は第1,2,3,4種チェビシェフ多項式の終結式の計算を行なった。第1,2種についてはJacobs,Rayes,Trevisanの計算結果が知られており、またLouboutinが別証明を与えているが、そのいずれとも異なる方法を用いた。得られた結果および証明にはヤコビ記号の相互律が密接に関わっており興味深い。論文にまとめ現在学術雑誌に投稿中である。研究分担者は有限体の等長埋め込みを考察し、標数2の場合にその特徴付けを行なった。成果を学術雑誌に発表し、また口頭発表を行なった。
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