研究課題
「付値環上の幾何学」という視点に照らして,リジッド幾何学に現れるザリスキー・リーマン空間が,リジッド幾何学のみならず,一般的な非アルキメデス的現象を捉える上で有効なものであることを見出すことを,最初の目標とした.その中で,特にリーマン面やそれを一般化した軌道体に付随した一意化,特にショットキー一意化との関わりに焦点をあて,その代数的・解析的記述に現れるアクセサリー・パラメーターの極限値の研究にリジッド幾何学を応用することを目指した.具体的な現象としては,ある種の興味深い代数曲線の退化族の具体的な記述から,その構造を調べることから始めた.これらについて調査・研究を進める中で,その極限の存在のために,対数的幾何学とリジッド幾何学を組み合わせることで,有効な知見が得られた.複素数体上の古典的なショットキー一意化と,リジッド幾何学で現れる非アルキメデス的一意化を比較することで,軌道体の退化(分岐点の合流)の形式モデルを考察,その存在と,それに付随したフックス型微分方程式を対数的幾何学の枠組みで自然に構成することにより,アクセサリー・パラメーターの極限の存在の「数論幾何学的証明」が得られたことになる.この研究は未だ発展途上にあるが,その際に開発した数々の幾何的インフラは,本研究の目的であるモジュライ理論への応用に大いに役立つものと期待できる.これらの成果について,すでに熊本大学で行われた『アクセサリー・パラメーター研究会』で報告している.
2: おおむね順調に進展している
上述の通り,「付値環上の幾何学」という視点からのリジッド幾何学のあり方が,具体的な数学的現象の文脈のなかで確認され,当初予定していた平成23年度の目標を達成できた.
●上記の研究成果を踏まえて,ザリスキー・リーマン空間のより進んだ性質の研究,その応用の可能性について,さらに追求する.●特にモジュライ理論への応用に焦点をあて,より現代的な枠組みの構築に力を注ぐ.
●調査・研究、及び研究連絡等のための旅費を国内,国外あわせて850千円計上する.その目的:本研究の「学術的な特色・独創的な点」の中核をなしている、いわゆるZariski- Riemann空間を調べることは、本研究がその究極の目標として掲げるところの、より一般的で整合的なリジッド幾何学の枠組みの構築のために不可欠であると判断されるが、その構造について深く研究を遂行することが重要である。このため、研究の第2年目である平成24年度は、多くの分野の専門家との交流を計り、多角的な知見の獲得に努力する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件)
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