最終年度は主に(1)リジッド幾何学全般の基礎付けを完了させること、および(2)リジッド幾何学を応用した高次元軌道体理論を将来的に主導する具体例の制作について取り組んだ。後者の高次元軌道体については、昨年度に引き続きテキサス大学オースティン校教授のDaniel Allcock氏との共同研究を進めた。2次元軌道体の具体例として新たな偽射影平面(Fake Projective Plane)を構築し、その基本的な性質や他の具体例との関連など、興味ある幾何学的事実を確認することはできたが、これを代数的な視角から把捉するまでには至ることができなかった。これは今後の研究課題の一つとなる。また、前者の基礎付け仕事の完了については、今年度も名古屋大学の藤原一宏との共同研究を推進し、これまでのすべての成果をまとめて発表することができた。その基礎付けにおいては、リジッド幾何学の構築の際に必要となる形式幾何学(formal geometry)の、今までにない極めて一般的な枠組みを構成することも含まれている。第一回目の発表は8月にarXiv上で行われ、多くの反響を得た。この発表以降も改良・修正を重ね、今年度中(2014年2月)に最終版にこぎ着けた。また、これと平行して出版のための手続きも進み、すでにヨーロッパ数学会のモノグラフシリーズから出版が正式に受理された。最終的なページ数は700ページ強となった。この研究成果は今後の続刊(第II巻、第III巻)も予定している。
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