研究課題/領域番号 |
23540016
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
渡部 隆夫 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30201198)
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研究分担者 |
早田 孝博 山形大学, 理工学研究科, 助教 (50312757)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 簡約理論 / ボロノイアルゴリズム / 数論的離散群 / 新谷の単数定理 |
研究概要 |
本年度は総実代数体上定義された一般線形群におけるRyshkov領域の記述とVoronoi簡約理論の構成を林琢磨, 矢野祥士との共同研究により完成させた. 具体的には, 一般の代数体上で Ryshkov 領域を構成し, その境界面の交叉関係が最短ベクトルを使って記述できることを示した. またRyshkov領域の頂点(perfect form) を順次決定するアルゴリズムを与えた. 更に, 総実代数体の場合には, 各perfect form から定まる Voronoi cone から, 数論的離散群の基本領域が構成されることを示した. この研究成果はKoecherによる自己双対等質錐上に作用する離散群の簡約理論に関する一般論を精密化したものである. Koecherの理論から基本領域を具体的に記述するのは困難であるが, 我々の理論は perfect form の決定アルゴリズムをもつので, Voronoi cone を具体的に計算することが可能であり, 基本領域を正確に記述できる. 特に次元が最少の場合は, この結果から新谷の単数定理の具体的記述が導出できるという重要な応用をもつ. 共同研究者の早田は, 次数2のシンプレクティック群のSiegelによる基本領域を織田孝幸と解析し, 境界の0次元セルを決定した. これらの結果は, 一般の簡約可能代数群の算術的商空間に対する基本領域の構造を調べるためのプロトタイプを与える. 以上の研究について平成23年10月31日から11月5日にわたり, Reduction Theory and Applications to Automorphic Forms というテーマで伊吹山知義と共同で研究集会を開催した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一般線形群における Ryshkov 領域と基本領域の記述ができたことにより, 一般の簡約可能代数群の算術的商空間に対するRyshkov領域の定義と基本領域の構成方法についてのアイデアが明確にできた. このアイデアに沿って, 数学的な証明を与えていくことで理論が自然に構築できると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
今後の目標は一般の簡約可能代数群の算術的商空間に対するRyshkov領域の定義とその基本性質を明らかにし, また基本領域の具体例を精密に記述することである. 一般論の構築については単独で行い, 必要に応じて書籍・学術雑誌で知識を集積しながら研究を進める. 具体例の構成については, 現在, 実2次体上のHilbertモジュラー群による算術商空間のケースについては, Dan Yasaki が活発に研究している. 他にも 織田孝幸, Gunnels, Fukushansky, Coulangeon, Schuremannなどの研究者と情報交換をしながら, 研究を進めていく.
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次年度の研究費の使用計画 |
早田孝博, 織田孝幸, Yasaki, Fukushansky, Coulangeon, Schuremannと討論を行う必要があるため, 研究集会参加の旅費とこの中の数名を招へいするための旅費に研究費の7割程度を使用する予定である. 書籍・学術雑誌を購入するための費用として, 研究費の3割程度を使用する.
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