研究概要 |
有限次代数体上定義された連結簡約可能線形代数群と極大放物的部分群を一つ固定する. このとき極大放物的部分群に依存してアデール群上の高さ関数が定まり, それからアデール群の算術的商空間上の算術的最少関数を定義することができる. 算術的最少関数の極大値は, 古典的なエルミート定数の一般化を与えることから, その極大値の決定や極大値を与える点の分布を調べることは, 古典的な理論に対する新しい視点を与えるとともに, 従来の手法では未だ解明されていない事柄について新たな知見を与える. 研究代表者は, 以前の研究で算術的最少関数は最大値をもつことを示したが, その方法はBorelとHarish-Chandoraによる簡約理論を使用するものであった. しかし Siegel set による考察では, 算術的最少関数がどこで極大値を取るかの情報を得ることはできない. 今回の研究では, 1970年の論文でRyshkovが定義したRyshkov多面体のアイデアを援用し, 問題とする算術的最少関数に対しRyshkov領域を定義しその基本性質を考察した. Ryshkov領域はアデール群の部分集合であるが, 極大放物的部分群の有理点からなる群の作用で不変になるという性質をもつ. このことから, Ryshkov領域内にこの作用に関する基本領域を取ることができる. 今回得られた主要な結果は, 以下のように記述される. この基本領域はまたアデール群の算術的商空間の基本領域を与え, 算術的最少関数の任意の極大値は, この基本領域の境界とRyshkov領域の境界の交わりの上で実現される. この結果により, 算術的最少関数の極大値を実現する点の分布については, Ryshkov領域の境界を調べればよいことが判明した.
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次年度の研究費の使用計画 |
早田孝博, 織田孝幸, Yasaki, Fukushansky, Coulangeon と討論を行う必要があるため, 研究集会参加の旅費とこの中の数名を招へいするための旅費に研究費の7割程度を使用する予定である. 書籍・学術雑誌を購入するための費用として, 研究費の3割程度を使用する.
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