研究課題/領域番号 |
23540020
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
権 寧魯 九州大学, 数理(科)学研究科(研究院), 准教授 (30302508)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ルエル型ゼータ関数 / セルバーグ型ゼータ関数 / ヒルベルトモジュラー曲面 / 素測地線定理 / ワイルの法則 |
研究概要 |
今年度は主に、ヒルベルトモジュラー曲面に対するルエル型ゼータ関数とその数論的応用について研究した。Kを類数1の実2次体とするとき、その整数環の元を成分にもつ次数2の特殊線形群であるヒルベルトモジュラー群を考える。この群は上半平面二つの直積に不連続に作用し、この作用による(非コンパクトなカスプ付き)商空間をヒルベルトモジュラー曲面という。ヒルベルトモジュラー曲面に対するルエル型ゼータ関数は重さ(0,2)のセルバーグ型ゼータ関数を用いてかけるので、対応するセルバーグ型ゼータ関数の解析的性質について詳しく調べた。この重さのセルバーグ型ゼータ関数の全平面への有理型解析接続を示し、零点と極の位置と位数、関数等式に現れる局所因子をすべて決定した。特に、自明零点の位数がヒルベルトモジュラー曲面のオイラー標数を用いてかけることが分かり、幾何的にも興味深いと言える。数論的な応用として、ヒルベルトモジュラー曲面に対する、原始的双曲‐楕円共役類に対応する「素測地線定理」を誤差項付きで証明した。併せて、証明の鍵となるヒルベルト‐マース形式の存在に関する固有値分布の「ワイルの法則」も証明した。ワイルの法則を導く際に、ヒルベルトモジュラー曲面に対するセルバーグ跡公式に現れる、散乱行列式が実2次体のヘッケL関数とそのガンマ因子を用いて具体的にかけることが証明の際に重要であった。また、ルエル型ゼータ関数の数論的表示を用いて、実2次体Kの整数環係数の不定値2元2次形式の類数和の漸近公式を導いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主要な研究目的であった数論的な応用である「素測地線定理」や、実2次体の整数環係数の2元2次形式の類数和の漸近公式などが誤差項付きで証明できたので、研究計画はおおむね順調に進展している言える。
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今後の研究の推進方策 |
直積型でない階数2の群の跡公式の差分の研究を行う。具体的には各放物型部分群から誘導された主系列表現のKタイプの分布を調べ、Kタイプを固定した跡公式をいくつか比較してそれらのKタイプに関する差分が出来るだけ簡単になる組み合わせを考察する。上記方法で、フルモジュラーな場合にいくつかのKタイプの組の候補に対して、散乱行列式と放物共役類の寄与の差分を計算する。得られた跡公式の差分を用いて、セルバーグ型関数の定義を行いその解析的性質を調べたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
国内外の整数論、表現論、特殊関数論等の研究者との研究打ち合わせや情報交換、議論を行うために、研究費で国内旅費や外国旅費を賄う。また、日常の研究や成果の取りまとめ等の文房具や計算機関連経費等に研究費を使用する。研究を円滑に遂行するための謝金等にも使用する。また、研究で得られた結果を広く知らしめるために国内外の研究集会やシンポジウムで発表するために国内旅費や外国旅費を使用する。
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