研究概要 |
今年度はヒルベルトモジュラー曲面に対するセルバーグ型ゼータ関数の特殊値とヒルベルト‐マース形式に作用するラプラシアンの固有値の組に関するゼータ正規化積について研究を行った。その際に、重さ (0,2) のセルバーグ型ゼータ関数の平方根ともいうべき“1/2次のオイラー積”をもつセルバーグ型ゼータ関数を新たに定義し、ヒルベルトモジュラー曲面のオイラー・ポアンカレ標数が偶数であるという仮定の下、全平面への有理型解析接続や正規化行列式表示を証明した。重さ (0,2) のヒルベルト‐マース形式の空間に作用する1番目のラプラシアンのある部分空間への制限に関するスペクトルゼータ関数を考察し、そのスペクトルゼータ関数が原点で正則であることを示した。結果として、平方根型セルバーグゼータ関数の上記の意味での制限されたラプラシアンに関する正規化行列式表示を得ることが出来た。併せてこの制限されたラプラシアンの正規化行列式のこのセルバーグ型ゼータ関数の特殊値を用いた表示を得た。重さが4以上の場合の制限されたラプラシアンについては、今回定義した平方根型セルバーグゼータ関数と以前に定義されその解析的性質がわかっている重さ4以上のセルバーグ型ゼータ関数をいくつか組み合わせることで、同様に正規化行列式表示が得られることが証明できた。そういった点からも今回定義され研究された平方根型セルバーグゼータ関数が重さが4以上の場合の研究においても重要であることがわかった。
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