キリン複体を、T_0分離公理を満たす有限空間の同変順序複体と見る視点からの考察を進めた結果、目標としていたホモトピー同値を満たすような理想的な定理を得ることはできなかった。その一方で、この方面からの様々な様相を解明することができた。昨年来、大阪大学の河野進氏(当初の研究計画には入っていなかったが、研究遂行上必要との判断の下、研究協力者として加わって頂いた)との共同研究で得られた結果は、一旦群論的な議論を離れ、変換群論的アプローチに集中するものであった。特に今年度はキリン予想の、我々の立場からの言い換え、すなわち「キリン複体が可縮ならば、複体に対応する有限有限T_0空間も可縮である」を精力的にアプローチしてきた。我々は、さらに一般的に「有限群が作用する有限T_0空間からできる順序複体が同変CW複体構造をもつか」という問題を設定し、最終的に肯定的な解答を得た。さらに「複体の軌道空間は複体構造を保つか、また軌道空間上でもMcCordの定理が成り立つか」という問題を設定し、これに対しても肯定的な解答を得ることができた。現在この成果を論文にまとめて、専門誌へ投稿中である。さらに研究代表者は、最新の研究成果発表として、昨年度6月末、阪大変換群論セミナ―にて「Quillen複体のトポロジー」という題目で講演を行った。さらに昨年末から、ホモトピー同値性を保つようなカテゴリーを設定するというアイデアの下、圏論的考察を進めてきた。平成27年(2015年)5月末にRIMS研究集会にて、その研究成果を発表予定である。
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