研究調書に記したテーマ B) に関連して,本研究代表者は,古典的な Epstein ゼータ関数 を Lerch ゼータ関数様に拡張した一般化 Epstein ゼータ関数に対して,パラメタの虚部が +∞ になるときの,パラメタの虚部の減少冪のオーダーを持った完全漸近展開を証明した.この漸近展開式からは,一般化 Epstein ゼータ関数の満たす擬保型性を経由して,そのパラメタが原点を中心とし偏角が 0 からπを見込む扇状領域内を原点に近づくときの完全漸近展開が導出されるとともに,その変数が整数点にあるときの,一般化 Epstein ゼータ関数の特殊値の種々の有限的な明示公式を得ることも出来る(成果詳細は欧文論文 "Complete asymptotic expansions associated with Epstein zeta-functions II" として,学術雑誌 "The Ramanujan Journal" に掲載予定).さらに本研究代表者らは,上記の古典的な Epstein ゼータ関数を,複素2変数及び2つの上半平面のパラメタの組を持つ形に拡張し,二つのパラメタの距離が各々 0 に近づくときと +∞ になるとき双方の完全漸近展開を導出することに成功した(成果は,欧文論文 "Transformation formulae and asymptotic expansions for double holomorphic Eisenstein series of two complex variables" として,現在投稿準備中である).この漸近展開式は,Ramanujan によって再定式化された Eisenstein 級数・楕円関数・テータ関数の理論との深い関連が明らかになりつつあり,今後の深化・発展が期待される.
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