本研究の主要な課題の一つは代数体の拡大における分岐および存在性に関する数論の研究である。 平成25年度では、事業期間初年度から引き続き惰性条件に関連する研究成果が得られた。ある惰性条件をみたす代数体の存在、非存在について、初年度に9次以下すべての121種を、前年度に10次38種および11次6種を解決したが、まだ10次7種および11次2種が確定できていなかった。当該年度では、10次7種のうちある1種についてガロアタイプの群論的分析によりある条件をみたす2次体と5次体の存在に問題を還元し、10次代数体の存在を実例の構成により決定できた。前年度までは既存の数表を利用する方法で考察してきたがその数表利用の限界に達したため、当該年度のような群論的分析により問題を還元するとともに計算機実験の可能な不変量を発見することが今後の研究課題である。 また当該年度では上記結果の他に、平成14年度に出版され本研究の基礎の一つとなっている論文について、その主結果の部分的な拡張が得られた。虚2次体の組の無限族におけるある条件をみたすイデアル類の存在を具体的構成法により証明できた。これにより虚2次体の組の無限族におけるある条件をみたす不分岐拡大の存在性が示された。今回の構成のために用いた既存の定理は実2次体に対しても知られているが複雑で実用困難のため、既存定理の改良あるいは生成多項式の実用化による考察が今後の研究課題である。
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