• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

量子エルゴード性の拡張

研究課題

研究課題/領域番号 23540031
研究機関東洋大学

研究代表者

小山 信也  東洋大学, 理工学部, 教授 (50225596)

キーワード量子エルゴード性
研究概要

本研究課題で目標に掲げている量子エルゴード性の一般化のうち,当該年度に挙げた実績は,レベルの一般化に成功したということである.
先行研究において,私は,量子エルゴード性が従来のスペクトルをわたらせた場合のみならず,他のパラメーターに関する極限においても成り立つ実例として,ガンマ0型の合同部分群のレベルが素数から成る無限列であるような合同面の系列に関し,レベルを無限大に飛ばした極限を挙げ,実際にその場合のアイゼンシュタイン級数(カスプは任意の列で良い)に対し,量子エルゴード性の成立を示した.
今回,私は共同研究者の中島さち子氏(東洋大学工業技術研究所客員研究員,個人名の明記について先方の許可を得ている)との共同研究により,先行研究で仮定していた「素数レベル」を「整数レベル」に拡張することに成功した.すなわち,ガンマ0型の任意の合同部分の列に対し,対応する合同面の列とそのアイゼンシュタイン級数が,レベルを無限大に飛ばした場合に量子エルゴード性,すなわち,値分布の極限的な均一性を持つことを証明した.この場合,カスプは素数レベルの場合と異なり,多数出現するが,それらのうちどのカスプを各レベルに関して選んでも,量子エルゴード性は成り立つことが証明できた.
証明の方法は,ルオ・サルナックが1995年に発見した方法を基本的に用いたが,彼らの証明はカスプが一個の場合であったため,今回はカスプによらないことを計算によって示した.さらに,オールドフォームとニューフォームの貢献をそれぞれ計算によってきちんと求め,フーリエ展開の明示的な形を用いることにより,計算を実行した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の研究目的に掲げた「カスプフォームの量子エルゴード性の新アスペクト」については手つかずであるがその反面,今回はこれまで素数レベルであったものを一般の整数に拡張したという予期せぬ成果が上がった.当初に掲げた問題の解決とは若干異なるが,研究の進展に伴って自然な変更が生ずるのはやむを得ないと考えれば,この成果はおおむね順調と考えてよいだろう.

今後の研究の推進方策

今後の研究推進方策は,数学の内容的には上に述べたように微妙な変更がある.カスプフォームに関して量子エルゴード性を新アスペクトで示すという当初の計画よりも,アイゼンシュタイン級数の研究をより深めていきたいと考えている.

次年度の研究費の使用計画

研究費の使用という観点で見れば,研究打ち合わせや会議参加のための旅費が中心であるから,変更なしと言える.研究集会等で中島さち子氏らと研究打ち合わせを重ねながら研究を推進していく.なお,前年度は他の研究課題のための補助金(東洋大学特別研究)が採択されたため,汎用性のあるOA機器や消耗文具などをそちらの予算で賄うことができ,本研究費に余裕ができ,数万円の残額が生じた.次年度にはこの残額をOA機器や消耗文具に充当する予定である.

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] Formal group laws for multiple sine functions and applications2013

    • 著者名/発表者名
      Shin-ya Koyama and Nobushige Kurokawa
    • 雑誌名

      Kodai Mathematical Journal

      巻: 36 ページ: 109-118

    • DOI

      10.2996/kmj/1364562723

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Zeta functions of generalized permutations with applications to factorization formulas2012

    • 著者名/発表者名
      Shin-ya Koyama and Sachiko Nakajima
    • 雑誌名

      Proceedings of the Japan Academy

      巻: 88A ページ: 115-120

    • DOI

      10.3792/pjaa.88.115

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 生体系のランダム行列理論2012

    • 著者名/発表者名
      小山信也
    • 雑誌名

      日本数理生物学会ニュースレター

      巻: 67 ページ: 9-11

  • [学会発表] 数論的量子カオスと量子エルゴード性

    • 著者名/発表者名
      小山信也
    • 学会等名
      スペクトル理論と散乱理論
    • 発表場所
      京都大学数理解析研究所
    • 招待講演
  • [学会発表] Equidistribution of Eisenstein series in the level aspect

    • 著者名/発表者名
      小山信也・中島さち子
    • 学会等名
      Zeta Functions in Okinawa 2012
    • 発表場所
      フェストーネ(沖縄県)
  • [学会発表] Quantum ergodicity of Eisenstein series in the level aspect

    • 著者名/発表者名
      小山信也
    • 学会等名
      Random matrix theory for complex systems
    • 発表場所
      沖縄科学技術大学院大学
  • [図書] ABC予想入門2013

    • 著者名/発表者名
      黒川信重・小山信也
    • 総ページ数
      1-218
    • 出版者
      PHP研究所
  • [図書] すべての人の微分積分学2013

    • 著者名/発表者名
      小山信也・中島さち子
    • 総ページ数
      1-348
    • 出版者
      日本評論社

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi