研究課題/領域番号 |
23540031
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
小山 信也 東洋大学, 理工学部, 教授 (50225596)
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キーワード | 量子エルゴード性 |
研究概要 |
本研究課題で目標に掲げている量子エルゴード性の一般化のうち,当該年度に挙げた実績は,レベルの一般化に成功したということである. 先行研究において,私は,量子エルゴード性が従来のスペクトルをわたらせた場合のみならず,他のパラメーターに関する極限においても成り立つ実例として,ガンマ0型の合同部分群のレベルが素数から成る無限列であるような合同面の系列に関し,レベルを無限大に飛ばした極限を挙げ,実際にその場合のアイゼンシュタイン級数(カスプは任意の列で良い)に対し,量子エルゴード性の成立を示した. 今回,私は共同研究者の中島さち子氏(東洋大学工業技術研究所客員研究員,個人名の明記について先方の許可を得ている)との共同研究により,先行研究で仮定していた「素数レベル」を「整数レベル」に拡張することに成功した.すなわち,ガンマ0型の任意の合同部分の列に対し,対応する合同面の列とそのアイゼンシュタイン級数が,レベルを無限大に飛ばした場合に量子エルゴード性,すなわち,値分布の極限的な均一性を持つことを証明した.この場合,カスプは素数レベルの場合と異なり,多数出現するが,それらのうちどのカスプを各レベルに関して選んでも,量子エルゴード性は成り立つことが証明できた. 証明の方法は,ルオ・サルナックが1995年に発見した方法を基本的に用いたが,彼らの証明はカスプが一個の場合であったため,今回はカスプによらないことを計算によって示した.さらに,オールドフォームとニューフォームの貢献をそれぞれ計算によってきちんと求め,フーリエ展開の明示的な形を用いることにより,計算を実行した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究目的に掲げた「カスプフォームの量子エルゴード性の新アスペクト」については手つかずであるがその反面,今回はこれまで素数レベルであったものを一般の整数に拡張したという予期せぬ成果が上がった.当初に掲げた問題の解決とは若干異なるが,研究の進展に伴って自然な変更が生ずるのはやむを得ないと考えれば,この成果はおおむね順調と考えてよいだろう.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策は,数学の内容的には上に述べたように微妙な変更がある.カスプフォームに関して量子エルゴード性を新アスペクトで示すという当初の計画よりも,アイゼンシュタイン級数の研究をより深めていきたいと考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の使用という観点で見れば,研究打ち合わせや会議参加のための旅費が中心であるから,変更なしと言える.研究集会等で中島さち子氏らと研究打ち合わせを重ねながら研究を推進していく.なお,前年度は他の研究課題のための補助金(東洋大学特別研究)が採択されたため,汎用性のあるOA機器や消耗文具などをそちらの予算で賄うことができ,本研究費に余裕ができ,数万円の残額が生じた.次年度にはこの残額をOA機器や消耗文具に充当する予定である.
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