研究課題/領域番号 |
23540031
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
小山 信也 東洋大学, 理工学部, 教授 (50225596)
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キーワード | 量子エルゴード性 / 保型形式 / ゼータ関数 / L関数 / 量子カオス / 整数論 / 数論 / 国際情報交換カナダ |
研究概要 |
25年度の研究実績は,量子エルゴード性を標数正の場合に拡張するという目標に対し,証明の見通しが立ったことである.本研究の目標は,量子エルゴード性の概念をできる限り多様な場合に拡張することである.2009年,私は,波動形式の保型L関数の評価を改善できれば,目標とするアイゼンシュタイン級数の量子エルゴード性が証明できることを見出した.それ以来,L関数の評価の改善が本研究の主目標となった. これまでに得られているL関数の評価の改善では,解析数論の手法による指数和の評価の改善が必要であり,それを標数正に拡張すれば,本研究の目標を達成できる.しかし,その証明は複雑かつ膨大になるため,私はその方法をできる限り避けるべきと考え,他の証明方法を模索していた. そんな折,25年度よりカナダのブリティッシュ・コロンビア大学の鈴木史花氏との共同研究を開始し,鈴木氏の来日中には上智大学の都築正男氏を交えた三名で研究打合せを行なった.その席上で都築氏より,リーマン予想との関連でL関数の評価を改善できるのではないかとの意見が出された.すなわち,今目標としている評価の改善は,究極的にリンデレーフ予想と呼ばれる大きな予想の一部であるが,リーマン予想がリンデレーフ予想を含むことは,少なくとも標数0の場合には証明されている.一方,標数正の場合にはリーマン予想が既に示されている.したがって,リーマンとリンデレーフの二つの予想の関係を標数正の場合にも証明すれば,今の目標を達成できるだろうとの方針である.この方針は非常に有望であると考えられる.現在,リーマンとリンデレーフの二つの予想を標数正の場合に精査する作業に取り組んでいる.この研究は,次年度に完成させる計画である.なお,上記鈴木氏と都築氏に関し,個人名の記載を承認済である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
量子エルゴード性について,拡張するための証明の方針が立ち,これまで数年間考えてきたどの方針よりも有望であり,かつ実現の可能性が高い状態になったため.
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今後の研究の推進方策 |
26年度は,25年度に見出した研究方針を実践し,証明を完成したいと考えている.それが完成した暁には,申請時の研究計画に記したように,量子エルゴード性のさらなる拡張を目指し,研究を推進していく方針である.
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次年度の研究費の使用計画 |
わずか11円であるため,ほぼ使用計画通りの予算執行となっている. わずか11円であるため,使用計画に変更はない.
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