研究課題/領域番号 |
23540031
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
小山 信也 東洋大学, 理工学部, 教授 (50225596)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | 量子エルゴード性 / アイゼンシュタイン級数 / 保型形式 / ゼータ関数 / L関数 / 量子カオス |
研究実績の概要 |
関数体上のアイゼンシュタイン級数の量子エルゴード性のレベルアスペクトの証明について,本研究において昨年度までに判明していたことは,以下の2点であった. (A)保型L関数の臨界線上の絶対値の評価の改善が成されれば,量子エルゴード性は証明できる. (B)関数体上の保型L関数について,リンデレーフ予想の類似が成り立つと考えられるので,それを証明することで本問題は解決できるだろう. (A)は研究開始当初から認識しており,以後本問題を保型L関数の評価に帰着して考察を進めてきた.その過程で,昨年度に(B)を見出し,保型L関数のリンデレーフ予想の類似の証明を主眼に置いて今年度の研究を進めてきた.その結果,今年度は,以下の方針に到達した. (C)関数体上の保型L関数はリーマン予想の類似を満たすと考えられるので,リーマン予想からリンデレーフ予想を証明できるだろう. 関数体上の保型L関数がリーマン予想の類似は,ドリーニュによって証明されたヴェイユ予想に含まれるので,すでに証明されていると考えてよい.そうすると,解析数論の古典的な議論で良く知られているように,リーマン予想からリンデレーフ予想が従うという理論が構築でき,今,目標としているリンデレーフ予想が証明できることになる.そこで,今年度はリーマン予想とリンデレーフ予想の関係を関数体上で再構築することに焦点を絞り,それに関する研究を行った.その過程はいまだ完了していないが,元来のリーマン・ゼータ関数の場合にリーマン予想とリンデレーフ予想との関係を精査した結果,証明の方針は関数体上の保型L関数に対しても適用できそうであることがわかったので,次年度はその方針で証明を進めたいと思っている.それによって,本研究の目標である関数体上のアイゼンシュタイン級数の量子エルゴード性が証明できると考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
関数体上のアイゼンシュタイン級数の量子エルゴード性のレベルアスペクトという点に関して言えば,順調に進んでいると言えるが,これは当初の研究計画の一部に過ぎない.研究計画の中で掲げたカスプ形式への拡張や,標数0の場合については,研究が手つかずのままであり,当初の目標のすべてを実現することは難しい状況である.
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今後の研究の推進方策 |
関数体上のアイゼンシュタイン級数の量子エルゴード性のレベルアスペクトの証明を完成させることを,最重要目標と位置付け,今年度に到達した研究方針によって研究を進めていく.
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