研究概要 |
今年度は、平方剰余の条件のついた剰余位数分布問題において成果が得られた。これはデデキントゼータ関数が関連する問題である。まず、整数 a と素数 p(p は a を割らない)を取る。Z/pZ の乗法群における a の(群論的意味での)位数を D_a(p) で表すことにする。これは広い意味で数論的関数の一種と捉えることができる。他に整数 b を取ってルジャンドル記号を (b/p) で表す。このとき、集合 S_{a,b}(k,l)={p は素数; p は a,b を割らない、D_a(p)≡l (mod k)、(b/p)=1} の自然密度を考察するのがこの問題である。これは、集合 Q_a(k,l)={p は素数; p は a を割らない、D_a(p)≡l (mod k)} の自然密度を考察する剰余位数分布問題の自然な拡張である。Q_a(k,l) に条件 (b/p)=1 を付加することで、Q_a(k,l) は確率的にはちょうど二分されるはずであるが、a と b が互いに代数的に影響を与え合うことにより、確率的推論が成り立たない場合がある可能性がある。こうした事情を調べることが目的である。今回、k=q が素数であり、l=0 の場合を主に考察した。その結果、多くの場合は S_{a,b}(q,0) の自然密度はQ_a(q,0) のそれの 1/2 となるが、ある場合には確率的推論通りにならない場合があることが判明した。それは(条件は複雑なので詳細は述べられないが、荒く言えば)a または b が素因子として 2 を含み、かつ q=2 の場合に起こることである。そしてその場合は、ごく間接的ではあるものの、原始根の動きを観察できていると考えることもでき、大変興味深い結果が得られたと考えている。他に、関連する数値実験も数多く行なった。
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