研究課題/領域番号 |
23540035
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
中川 暢夫 近畿大学, 理工学部, 研究員 (10088403)
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キーワード | planar function / APN function / semifield / 有限体の交代積 / 有限体の対称積 / translation plane / dual hyper oval / semi-biplane |
研究概要 |
研究実績は、体の標数が2と奇素数pの場合に分けて、一つは2のn乗元体F上のquadraticな APN関数の同値類を置換群の視点で捉え、この観点から与えた自然数nに対し、非同値なquadratic APN関数の数をあるnの関数による不等式で評価する予測がたったことであり、更にquadratic APN関数からどのような幾何構造が対応するかを考察しこれらの間の精密な関係を記述し、対応する幾何の自己同型群を1部決めたことである。もう一つはpのn乗元体K(n)上のquadratic平面関数に対応するアフィン平面および可換semifieldsを詳細に調べ、互いにisotoropic非同型なsemifieldsは互いに非同値な平面関数に対応することを利用して、非同値なquadratic平面関数はどれぐらいあるかをn=2,3について示したことである。 研究が発展しつつある点: 標数が奇素数の場合においても、K(n)上のquadraticな平面関数fは、GF(p)上のn次対称行列全体がなすベクトル空間MS(n)((n(n+1)/2)次元)の(n(n-1)/2)次元部分空間W=W(f)で次の条件(C)を満たすものに対応することがいえた。(C):Wは階数1および2の行列を含まない。この条件を満たす部分空間全体ΩにGF(p)上のn次一般線形群群GL(n,p)が作用し、この群の可遷域[W]とWに対応するfの同値類が1:1に対応することを示した。このことを使ってnが比較的小さいときpのn乗次のquadraticな平面関数で非同値なものの個数を評価していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 標数が2の有限体上の関数の研究:2のn乗元体F上のquadraticなAPN関数fで、その同値類[f]には、置換群の視点で見ると群G:=GL(F)の集合S(r,NP,FΛF)への作用における一つの可遷域[W(f)]が対応し、この対応は1対1である。ここで,FΛFはFの交代積、r=n(n-3)/2でS(r,NP,FΛF)はFΛFのr次元部分空間のうち、零でないpureベクトル(xΛyの形のベクトル)を一つも含まない空間全体からなる集合である。置換群(G,S(r,NP,FΛF))の可遷域の個数N(n)が、非同値なquadratic APN関数の個数でもある。計算ソフトMagmaによるN(4),N(5),N(6)の計算実験をもとに、N(n)の評価をnに関するある不等式を予想し検証中である。 (2) 標数がp(奇素数)の有限体上の関数の研究:pのn乗元体K(n)上のquadraticな平面関数を置換群の観点から研究して次数pの2乗およびpの3乗のquadraticな平面関数の分類を仕上げた。この研究は標数2の体上の関数について得ていた理論のアナロジーである。要点は次のように与えられる。Kの対称積K△Kを考える。(x,y)--->x△yはK×KからK△Kへの対称2次形式でKの基底{e{i}|i=1,2,--.n}に対しK△Kは{e{i}△e{j}|i=j又はi<j}で生成される(基底でもある)。GL(K)の元gはg(x△y)=g(x)△g(y)によりK△K上同型写像として作用する。零ベクトルでないx△y (x,y in K)の形のベクトルをpureとよぶ。r=n(n-1)/2に対し、K△Kのpureベクトルを一つも含まないr次元部分空間をSNP(r)で表すと、置換群(GL(K),SNP(r))の各可遷域とK(n)上のquadratic平面関数の同値類が1:1に対応する。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 2のn乗個の元からなる体をF:=F(n)とする。r=n(n-3)/2とする。Fの交代積FΛFにおいて、零ベクトルでないxΛy (x,y in F)の形のベクトルをpureと呼ぶ。i個のpureベクトルu{1},---,u{i}を含むようなFΛFのr次元部分空間からなる集合をS(u{1},---,u{i})とかく。異なるi個のpureベクトル取り出すすべての取り方にわたっての|S(u{1},---u{i})|の和をs(i)で表す。Σ((-1)のi乗)s(i),(i=0からi=Mまでの和)がFΛFのr次元non-pure部分空間の総数Lと一致することは既に示している。ここでM=(2の(n-1)乗)(2の(n-2)乗)/6である。(L/|GL(n,2)|)>g(n)なる関数g(x)を得るのが研究推進方策の一つである。g(x)はxが大きくなればg(x)も大きくなるような関数としたい。これは、quadratic APN関数が同値を無視して数多くあることに繋がる。 (2) pのn乗元体K(n)上の非同値なquadratic 平面関数がnに比例して、数多くあることを置換群の見地および可換semifieldsとの対応関係の見地から示していくことが研究推進方策第二である。 (3) GF(p)(pは奇素数)上のn次正方行列をn枚重ね合わせたもの(c{i,j,k})をn-cubeとよぶ。任意のiを固定してn次正方行列(c{i,j,k})が正則であり、任意のjを固定してn次正方行列(c{i,j,k})が正則であるときn-cubeは正則であるという。正則なn次cubeから可換semifieldが構成され、そのsemifieldの上の平方写像として平面関数が構成される。Magmaによる計算例を参考にしながら正則なn-cubeで非同値なものをできるだけ構成していくことが研究推進方策第三である。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1) 計算ソフトMagmaの最新版を購入して計算アップをはかる。また 計算ソフトMathematica を購入して計算能力を高める。 (2) 7月の21日-26日にドイツ、MagdeburgのOtt-von-Guericke大学で行われる「第11回有限体とその応用」国際会議に出席して研究成果を発表する。また、7月18,19,20の3日間ドイツSiegen大学のRuland教授と研究課題についての研究に関する情報交換と討論をおこなう。 (3) 8月11月にそれぞれ2日間、東京女子大の吉荒教授、高松高専の谷口教授と私の3人でquadratic APN関数とsymplecticタイプの超卵形集合に関する集中セミナーを東京女子大で行う。また、5月と10月に行う「有限幾何とその周辺」研究集会に参加して、研究成果を発表る。物品は消耗品を買うだけとしたい。
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