研究概要 |
当研究の目標は有限アフィン平面の研究に付随して現れてくる有限体上の関数、特に平面関数及び平面関数の標数2バージョンであるAPN(Almost perfect nonlinear)関数を構成し、これらの関数の分類に見通しをつけることである。本来、有限群間の関数である平面関数を有限体上の関数をみなすためには、二つの大きな予想問題が解決されねばならないのだが、このことは当研究の直接の課題ではない。濃度がpのn乗の有限体(pは奇素数)上の平面関数に関する研究実績はFの対称積 FΔFのn(n-1)/2次元非純(non-pure)部分空間がなす集合とその上に作用する線形群GL(F)からなる置換群を考え,この置換群の可遷域の一つ一つとF上の2次(quadratic)平面関数のEA-同値類の一つ一つとが1:1に対応することを証明したこと、更にこのことを利用してn=uvでvが奇数なら関数 f(x)=(xの(1+pのu-power)乗) が平面関数になることを示したことである。 次に,濃度が2のn乗の有限体F上のAPN関数に関する研究実績はFの交代積FΛFのn(n-3)/2次元非純(non-pure)部分空間がなす集合とその上に作用する線形群GL(F)からなる置換群の可遷域の一つ一つとF上の2次(quadratic)APN関数のEA同値類の一つ一つとが1:1に対応することを証明したこと、更にこのことを利用して互に非同値なF上のAPN関数の総数を示すある種の評価式を与えたことである。更に、濃度が2の2e乗の有限体F上のある方程式系がこの体の中で丁度2個の解をもつための必要十分条件を与えて、このことを用いて、F上のあるquadraticAPN関数を構成したことである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
奇標数の場合:濃度がpのn乗の有限体F上のquadraticPN関数(平面関数)の分類の研究の方向ははっきりしてきた。Fの対称積の非純ベクトルからなるr=n(n-1)/2次元部分空間全体の集合をΩとする。GF(p)上Fの一般線形群G:=GL(F)はFの対称積に作用するので、Ωにも作用して置換群(G,Ω)が考えられる。この置換群の可遷域が全部でc個あれば、F上の互いに非同値なquadratic PN関数の個数も丁度c個になることは当研究中示した。 一般にはn >2ならばc>1しか解っていない。予想としてnのある関数g(n)が存在して、c>g(n)かつnが大きくなるに従いg(n)も大きくなるであろうと確信するがこのことは未解決である。x→xの(u-power of p)+1)乗の形の、pのn乗元体上の関数がいつPN関数になるかの判定条を得たことを考慮してこの場合の研究の達成度は6割である。 偶標数の場合:濃度が2のn乗の有限体Fの交代積の非純ベクトルからなるr=n(n-3)/2次元部分空間全体の集合をΛとする。GF(2)上Fの一般線形群G:=GL(F)はFの交代積に作用するのでΛにも作用して置換群(G,Λ)が考えられる。この置換群の可遷域が全部でd個あれば、F上の互いに非同値なquadratic APN関数の個数も丁度d個になる。i=1,2,3,---に対しa(i)をFの交代積のr次元部分空間で少なくともi個の非純ベクトルを含むようなものの個数とする。dはa(i)(i=1,2,---)を含む式の交代和で評価できるが、dの価そのものは決定できない。濃度が2の2e乗の有限体F上の方程式 (2t-power of x)+a(t-power of x)+b(2-power of x)+(a+b+1)x=0,(tはe-power of 2)がF内に丁度二つの解をもつ必要十分条件を得た。この応用として、2k| e, k>1,cが0でも1でもなくcが濃度(k-power of 2)の部分体に属するとき、f(x)=(3-power of x)+((2t+1)-power of x)+c((t+1)-power of x))が濃度2の2e乗の有限体上のAPN関数であることを示した。これらの成果から、この場合の研究の達成度は6割である。
|
今後の研究の推進方策 |
奇素数pに対し、濃度がpのn乗の有限体F上のquadratic NP-functions(平面関数)の互いに非同値なものの個数の値NについてNを決定することは非常に難しい。置換群の視点からnが大きくなるに従いNも大きくなるといった形の評価式を得たい。同様に、濃度2のn乗の有限体F上のquadratic APN functionsの非同値クラスがどれほど存在するかという評価をしたい。その方法としては、G:=GL(n,p)または, G:=GL(n,2)の有限体上の表現論を利用して既約加群と置換群(G,Ω)または(G,Λ)の可遷域の関係を細かく調べていく。 f(x)=((1+u-power of p)-power of x)の形の平面関数の間でEA同値または非同値をはっきりさせる。また、ソフトMagmaを併用してf(x)=(2-power of x)+Trace((1+(u-power of p))-power of x) の形の関数に平面関数がないかどうかを決定すること、もしないなら非線形度がどれぐらい高いかを判定する。 標数2の有限体上の方程式の解の個数を評価するとき、有限体における加法と乗法の両方が交錯する式の意味付けに何時も苦労する。剰余環としての定義の本にかえり考察するのが本筋であるが、もう一つはガウス和やクルースターマン和を用いて方程式の解の個数を表示することにも精力注ぐ。有限体上の方程式の理論が完備してくれば、有限体上の関数の非線形度もおのずと解決するものであるとの確信のもとで研究をすすめている。 これまでの成果を二つの論文にまとめた。そのうちの一つは現在投稿中。
|