研究実績の概要 |
当研究の最大の目標は暗号理論で重要視されている有限体F=GF(2のn冪)上quadratic almost perfect nonlinear(qAPN)関数のExtendedAffine(EA)同値類の個数を評価し、nが大きくなるに従いこの値も大きくなることを示すことにある。このためにある置換群の観点から研究を行ってきた。Fの交代積F(A)Fは2元体上のn次交代行列全体Al(n,2)がなすベクトル空間と同型である。階数2に対応するF(A)Fのベクトルを純ベクトルという。純ベクトルを含まない部分空間を非純部分空間という。 線形群G=GL(n,2)はF(A)Fに自然な形で作用し、純ベクトルを保つ。故に、F(A)Fの余次元nの非純部分空間の集合をS(NP)とかくと、GはS(NP)に作用して、置換群(G,S(PN))が定まる。また、F上のqAPNのEA同値類からなる集合と(G,S(NP))の可遷域の集合との間に1対1の対応が存在する。此処までは当研究の初年度に示した。 S(NP)の濃度の値をあるパラメーターs(i)(i=0,1,2,...)達の交代和s(0)-s(1)+s(2)-s(3)+...で表されることを昨年度に示した。今年度に得た成果の一つは各S(i)の下限p(i)と上限q(i)を計算したことである。 このことを利用してnが大きくなるに従い(G,S(NP))の可遷域の個数が大きくなることを示すことがこれからの私の研究課題である。今年度n=5について置換群(G,S(NP))の構造を決めた。また、昨年度F上のある線形方程式の解の個数の振る舞いを調べこの定理を応用して3つのqAPN関数を構成したが、今年度はこれらに対応する非純部分空間を決定した。更にqAPN関数のなかで最重要なものであるGold functionsにEA同値な関数の表示を見易い形で与えたことも今年度の研究成果である。
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