研究概要 |
多重ゼータ値(MZV)の和の満たす線形関係式の族について、系統的に把握されるいくつかのケースは、ガウス超幾何関数や楕円種数に現れる母関数と関係するほか、結び目の母関数型不変量の係数がMZVであるなど、幾何学的な対象との詳しい関係解明が待ち望まれている。この中で4月にはニュートン研究所にて、MZVの関係式族と、基底に関するBrown-Zagierの研究成果との兼ね合いから垣間見える、等号付きMZVに関する展望と予想について招待講演を行った。また、Zagier, Broadhurst, Hoffman, Brown, Furusho, Gangl各氏と有限MZVとMotivicMZVについて議論を行い、問題意識の共有と理解を深めた。その中で、有限MZVの等号付き版についての組合せ論的性質とそれらから把握されるOhno-Zudilinによる2-1公式の構造的解釈について研究進展が得られたほか、Yamamoto氏によって定式化された補完関数についても研究を行い一定の新事実が把握できた。この間、2元3次形式の間の類対応の研究では、類の間を系統的に繋ぐ螺旋構造をモデル化することによって詳細に理解できるようになった。9月にはマックスプランク研究所にて、Zagier氏, Gangl氏らとMZVの環構造や2元3次形式の類対応について議論を行い、指標付きMZVに関するBroadhurst氏らの研究成果について研究を行った。 愛媛大学代数セミナーや大阪大学整数論保型形式セミナーで、MZV和の母関数の満たす微分方程式とガウスの超幾何関数に関するZagier氏との共同の結果や、多重ベルヌーイ数の満たすKummer型合同式の部分的解明について講演した。また、主催する関西多重ゼータ研究会は本年度内に第15回~第20回を開催し、特に若手研究者の育成、研究発表と勉強の場の提供を継続的に行っている。
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