研究課題/領域番号 |
23540038
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
尾形 庄悦 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90177113)
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キーワード | 代数幾何学 |
研究概要 |
昨年度から、偏極トーリック多様体に対応する整凸多面体が整区間とのミンコフスキー和である場合を中心に扱ってきたが、今年度、4次元以上での証明中に誤りが見つかって、大阪大学の東谷氏と仙台や京都で何度か研究打合わせを行い、誤りを訂正できた。この結果、5以上のnに対し、n次元のアンプルな整凸多面体で、2倍がベリーアンプルだがn-2倍しても正規にならない例を多数構成できた。以上により、3次元以上の各次元には、ベリーアンプルだが正規でない整凸多面体が多数存在することが解り、私と東谷氏の例は、高次元での整凸多面体の複雑さを表すものである。10年前までは混同されていたベリーアンプルと正規性の違いが頻繁に起こりうるという、予想されていなかった結果が得られた。 また、整区間とのミンコフスキー和である3次元の非特異整凸多面体の正規性を証明したことにより、他の非特異3次元整凸多面体の正規性の証明法に適用できることが解った。この結果を代数幾何の用語で表すと、非特異3次元トーリック多様体が射影直線への定数でない正則写像をもつ場合と、あるアンプル直線束でその随伴束が巨大(big)でない場合に、このトーリック多様体上のすべてのアンプル直線束が単生成であることを証明したことになる。特に、3次元トーリック・ファノ多様体上のすべてのアンプル直線束が単生成であることが解った。 これらのアイデアは、日本国内や海外での研究集会に参加して、研究者と直接意見交換をしたことにより、生まれたと思われる。研究費を旅費として使えたことが、成果を得るために大きな要素であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の前段階では、一般の非特異トーリック多様体を扱ってきたが、この研究では、トーリック多様体が射影直線への定数でない正則写像をもつ場合や、随伴束が巨大ではないアンプル直線束をもつ場合など、多様体の種類を限定することで、問題解決の手法が新たに開発できたことが、順調に進展している理由と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題名にあるミンコフスキー和をキーワードに、整凸多面体の正規性の証明に使える手法を改良・発展させるアイデアを見つける。 特に、ゴレンスタイン3次元ファノ多面体と区間のミンコフスキー和が正規になる条件をみつけて、トーリック弱ファノ多様体上のアンプル直線束の単生成を調べる。ゴレンスタイン3次元ファノ多面体は、分類によると4千3百個以上あるが、もっと緩い10個ほどの分類で解決できるようなコンピュータに依らない分類法をみつける。 これらの研究に役立つアイデアを得るために、日本国内や海外で開催される代数幾何学の様々な勉強会や研究集会、さらに、組み合わせ論の研究集会に参加し、研究成果を発表し、かつ参加者と意見交換をする。
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次年度の研究費の使用計画 |
「該当なし」
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