研究課題/領域番号 |
23540039
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
増岡 彰 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (50229366)
|
キーワード | スーパー・アフィン群 / ホップ代数 / 超代数 / Harish-Chandraペア |
研究概要 |
アフィン群(スキーム)とは可換代数の圏上定義された表現可能な群函手であり、従ってアフィン(代数)群と(有限生成)可換ホップ代数とが対応する。これを機械的に拡張してスーパー・アフィン群が定義され、スーパー・アフィン(代数)群と(有限生成)可換スーパー・ホップ代数とが対応する。スーパー・アフィン群を主にホップ代数の方法を用いて研究した。 標数が2と異なる基礎体上のスーパー・アフィン代数群Gに、あるアフィン代数群G'と有限次元ベクトル空間Wが付随する。G'はGの定義域を可換代数の圏に制限することで得られ、WはGの単位元における余接スーパー・ベクトル空間の奇数成分として与えられる。ペア(G', W)にある構造を与えてHarish-Chandraペアが得られる。このペアからGが復元できること、もっと精密に、スーパー・アフィン代数群全体とHarish-Chandraペア全体との間に圏同値が存在することを証明した。これを応用して、単連結、ベキ単、線型簡約といったスーパー・アフィン代数群の特徴付けを得た。 代数閉体上のアフィン代数群のうち、滑らかな連結かつ簡約代数群はシュヴァレー群で尽くされ、このシュヴァレー群は有理整数環上すでに定義されることが知られている。FioresiとGavariniはシュヴァレー群のスーパー類似として、スーパー・シューヴァレー群を構成した。上に述べた、Harish-Chandraペアからスーパー・アフィン代数群を構成する方法を、基礎体を単項イデアル整域に一般化することにより、スーパー・シューヴァレー群のより一般的かつ組織的構成法を与えた(柴田大樹氏との共同研究)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.計画していた、Harish-Chandra ペアを用いたスーパー・アフィン代数群の構成法を得ることができた。まず基礎環が体の場合に単独で、ついでそれを一般化した基礎環が単項イデアル整域の場合に大学院生の柴田大樹氏との共同研究で得た。 2.この構成法により、スーパー・シュヴァレー群のより一般的かつ組織的構成が可能になった。 3.以上の研究成果を3つの国際会議で発表することができた(うち一件は確定)。
|
今後の研究の推進方策 |
スーパー・アフィン代数群Gの積分について柴田大樹氏(大学院生)、C. Pastro 教授(九州大学)、N. Andruskiewitsch 教授(コルドバ大学)らと研究する。Gに対して、次の3条件が互いに同値になることが(本質的に)知られている。(i)Gが積分を持つ。(ii)入射的スーパーG加群が射影的である。(iii)有限次元スーパーG加群の入射包絡がまた有限次元である。これらの3条件が成り立つための必要十分条件として次が予想される。 (iv)Gに付随するアフィン代数群G'が積分を持つ。注意すべきは、基礎体の標数がゼロの場合、(iv)が成り立てばG'は必然的に全積分を持つ、同値にG'加群がすべて射影的かつ入射的となる点である。一方、(i)-(iii)が成り立ってもGが全積分を持つ、同値にスーパーG加群がすべて射影的かつ入射的となることは稀であるから、アフィン群とスーパー・アフィン群の際だった相違を示す結果が期待される。
|
次年度の研究費の使用計画 |
1.国外旅費。(i) 米国数学会 Sectional Meeting, Boston College にて研究成果発表。並びに M. Beattie 教授 (Mount Allison Univ.) らと研究連絡を行う。4月4日~4月11日。(ii) カナダ数学会 Summer Meeting, Dalhousie University にて研究成果発表。6月1日~6月9日。(iii) アルゼンチン国立コルドバ大学にて N. Andruskiewitsch 教授らと共同研究。9月下旬から3週間。 2.国内旅費。(i) 九州大学にてCraig Pastro 准教授と共同研究。7月下旬1週間。(ii) 広島大学、代数学シンポジウムにて研究成果発表。8月下旬4日間。 3.代数群、スーパー幾何学関連図書購入。4月~6月。
|