非可換ゴレンシュタイン環とは通常、アウスランダー条件をみたしかつ両側で有限の自己移入次元を持つ非可換ネター環のことを意味する。このアウスランダー条件と云うのは左右対称の概念であり、有限生成加群に非常に良い圏論的なフィルター付けを与えるものであるが、必ずしもホモロジー代数的性質とはいえない面がある。即ち、導来同値の下で保存されない。また、導来圏における双対理論の観点からは、両側で有限の自己移入次元を持つ非可換ネター環で十分であり、必ずしもアウスランダー条件を必用としないと云う事実もある。 他方、非可換ネター環については、左右の自己移入次元は常に一致するか?と云う未解決の問題がある。(ともに有限なら一致することは知られている。)反例は挙っていないが、肯定的な部分解も無いに等しい。 本研究では、非可換ネター環に対して、両側で有限の自己移入次元を持つための必用十分条件を片側だけの条件として与えた。具体的には、nを非負整数として、与えられたネター環が左右でn以下の自己移入次元を持つためには、被約グレードがn+1以上の有限生成右加群がすべてゴレンシュタイン射影加群であり、かつ(nが2以上の場合)被約グレードがnー1以上の有限生成右加群がある幾つかの条件をみたすことが必用十分であることを示した。
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