研究実績の概要 |
有理数の環を Q で表し、標数 p の素体を F_p と書く。さらに x, y, z は不定元とし、多項式 S_Q = Q[x, y, z] および S_p = F_p[x, y, z] を考える。有理整数環上の多項式環 Z[x, y, z] のイデアル J に足して、J_Q と J_p はそれぞれ J を S_Q と S_p に拡大したイデアルを表すことにする。今年度の研究では、十分大きな p に対してシンボリックリース代数 R_s(J_p) がネータ環であってさらにある条件を充たすとき、対応するシンボリックリース代数 R_s(J_Q) がネータ環にはならないことを示した。さらに、その結果を応用することにより、これまでには知られていなかった多くの実例を見出すことができた。具体的には、3 以上の整数 m と 2 以上の整数 n に対して第 1 行に x、 yの(m + 1)乗、zの(n + 1)乗 が並び、第 2 行に y、zのn乗、x が並んでいるような行列をとり、その行列の極大小行列式で生成されるイデアルを J としてみた。主結果は「2mn - 3m - 4n が 3 以上ならば R_s(J_Q) はネータ環にはならない」という主張である。十分大きな素数 p に対して R_s(J_p) は有限生成にはなるものの、p 次まででは生成されないという事実が証明の鍵となる。また、剰余環 (S_Q)/(yS_Q + (J_Q)) の長さは 3n + 1 に一致するのだが、n = 2 とするとその値は 7 となる。この結果を用いることにより、スペース・モノミアル・カーブを定義する素イデアル P で R_s(P) がネータ環ではないものを、重複度が7(これまでに知られている例の中では最小の値である)となるように構成することができた。
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